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VOL.80

改正住宅セーフティネット法(2025年10月施行)

高齢者、低額所得者、子育て世帯……、誰もが安心して暮らせる住まいを

執筆東京グリーン法律事務所 弁護士 伊豆隆義

2025

9.17

 現代日本は少子高齢化社会、人口減少社会といわれ、また所得格差社会も進んでいる。そのことの是非や、とりわけ所得格差の解消をどうするかも重大な問題ではあるが、「住まい」に関してみてみると、今や、単身世帯の増加、持ち家率の低下等が進み、今後若年ファミリー世帯の賃貸住宅需要の頭打ちも予想される。その一方で、高齢者、低額所得者、障害者などの「住宅確保要配慮者」の賃貸住宅への居住需要が高まることが見込まれるが、賃貸住宅を提供する賃貸人としては、住宅確保要配慮者に賃貸した場合に、賃借人の家賃滞納、孤独死、相続、残置物処理等に対しての懸念が捨てきれず、需要に対して適切な供給がなされていない現状がある。

改良を重ねる「住宅セーフティネット法」

 住宅セーフティネット法(正式には「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」)は2007年に施行され、その後も改正が重ねられ、以下の取り組みが行われている。

① 住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度
② 登録住宅の改修・入居への経済的支援
③ 住宅確保要配慮者のマッチング・入居支援の実施

また、2001年施行の高齢者住まい法(正式には「高齢者の居住の安定確保に関する法律」)で制度化された「終身建物賃貸借制度」は、高齢者に対する住宅の供給の後押しをしてきた。
 これらの法制度により、セーフティネット住宅が供給されるなど、一定の供給の効果はあったものの、未だ今後の住宅確保要配慮者に対する住宅供給には不十分であり、また、賃貸人の不安の解消には必ずしもこたえていなかった。終身建物賃貸借制度についても要件充足のハードルがあり、普及に限界があった。そこで、住宅確保要配慮者向けの居住支援を更に強化する必要があり、地域の居住支援体制にも更なる充実が望まれている。

今回の改正のポイントは?

 そこで2024年、誰もが安心して賃貸住宅に居住できる社会の実現を目指して、住宅セーフティネット法を改正、また、高齢者住まい法や住宅金融支援機構法も改正された。それは、以下の3点を柱として、住宅確保要配慮者が安心して生活を送るための基盤となる住まいを確保できるよう、賃貸住宅に円滑に入居できるための環境の整備を推進する内容だ。

 1.大家が賃貸住宅を提供しやすく、要配慮者が円滑に入居できる市場環境の整備
 2.住宅支援法人等が入居中サポートを行う賃貸住宅の供給促進
 3.住宅施策と福祉施策が連携した地域の居住支援の体制の強化

3本の柱をそれぞれ見ていこう。

1.大家が賃貸住宅を提供しやすく、要配慮者が円滑に入居できる市場環境の整備

 まず、終身建物賃貸借制度を改正して、従前の物件毎の認可から事業者毎の認可に改めたのが大きい。終身建物賃貸借制度は、賃借人およびその配偶者等が存命中は契約が継続される(図2参照)。また、借地借家法に基づく法定更新や非居住賃借人への相続は認められないため、賃貸人は物件を提供しやすくなる。
 改正法以前は、物件ごとにバリアフリー等の厳格な要件を満たしたうえで申請が必要であり、利用は十分ではなかった。創設以来、徐々に浸透し、現在では1万4000戸を超える利用実績があるものの、その大半はサービス付き高齢者向け住宅に集中し、一般住宅での活用は進んでいない。
 今回の法改正では、基準遵守の誓約書を提出させることで事業者単位の認可制とし、加えて住宅ごとのバリアフリー基準も緩和された。これにより、今後は、サービス付高齢者住宅に限らず、広く一般住宅でも、終身建物賃貸制度を利用する例が増えるのではないだろうか。

【図1-1】

 また、現在多くの賃貸住宅では、家賃保証事業者の家賃保証を前提に、賃貸借契約がなされているが、住宅確保要配慮者の多くも家賃保証事業者の保証を求められている。賃貸人としては、家賃不払いを懸念して、家賃保証事業者の家賃保証を求めるのであるが、家賃保証事業者の中には、違法な明渡しに関与する者もいた。このたびの改正では、国土交通大臣が認定する認定家賃保証事業者や住宅金融支援機構による家賃債務保証保険などを創設し、これらを利用することで、賃借人にとってより安全な家賃保証となる。
 入居者死亡後の残置物についても、賃貸人がこれを勝手に処分することはできないが、今般の改正では、入居者が居住支援法人に予め残置物処理の委任をする制度を設け、これを利用することで、残置物処理の問題の解消も期待できる。

2.住宅支援法人等が入居中サポートを行う賃貸住宅の供給促進

 更に、居住サポート住宅の認定制度を創設し、住宅確保要配慮者への支援を従来のセーフティネット住宅からさらに充実させた。この点は、話題のキーワードVOL.67を参照されたい。ITCの活用による居住者の安否確認等は、住宅確保要配慮者への福祉サービスであると同時に賃貸人の居住者の孤独死等の不安解消にもつながる。
 生活保護受給者の住宅扶助費を賃貸人に代理納付できる制度も大きい。従前は、生活保護受給者の住宅扶助費は生活保護受給者に生活扶助費と合算して支払われることを原則としていたため、賃貸人としてはその中から確実に家賃が支払われるかの不安があり、生活保護受給者への賃貸住宅供給に心理的ハードルがあった。また、保護費をピンハネするなどのいわゆる貧困ビジネスの被害は社会問題ともなっていた。今後、居住サポート住宅に入居することにより、住宅扶助は賃貸人に直接支払われることから、賃貸人の不安を解消し、また悪質な貧困ビジネスから生活保護受給者を守ることも期待できる。

【図1-2】

3.住宅施策と福祉施策が連携した地域の居住支援の体制の強化

【図1-3】

 これまでは、福祉の支援を受ける場合に必ずしも住宅の支援が共同していなかった。そのため、たとえば生活保護受給者は、自ら住宅扶助の範囲の家賃の住宅を探して契約後に住宅扶助申請をすることになっていたが、改正住宅セーフティネット法施行後は、共通窓口での支援を受けることが可能となった。国もこれまで、住宅施策は国土交通省が、福祉施策は厚生労働省がそれぞれ個別に基本方針を定めていたが、今後は両省が連携し、共同して定立していくこととなったため、今後の行政サービスの拡充が期待できる。

(図1-1~3 出典:国土交通省ウェブサイト

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