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法改正で高まる二地域居住への期待と課題

執筆:住まい・まちづくり研究家 桑島良紀(明海大学不動産学研究科博士課程)

2024

7.3

 5月15日、参議院本会議で「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律案」(改正広域的地域活性化法)が可決、成立した。この法律は、都市と地方に2つの拠点を持ち、地方で一定期間を過ごすというライフスタイル「二地域居住」を推進するものだ。移住や定住よりもハードルが低く、地方活性化の効果が期待されている。今回の改正では、都道府県と市町村との連携のほか、住む場所に加え、コワーキングスペースのような働く場所、地域コミュニティに溶け込むことを支援する担い手の指定が新たに盛り込まれた。この法律は2024年秋までには施行される予定となっているが、二地域居住はテレワークが身近になった都市住民の暮らし方を変えるほか、災害復興への効果も期待されている。

改正広域的地域活性化法が成立
働く場とコミュニティの場を重視

 まずは、改正広域的地域活性化法で新しくなった部分の概要をみていこう。都道府県と市町村が二地域居住に関する連携を進めるために、市町村が作成する計画(特定居住促進計画)制度を新たに設けている。これまで都道府県が作成していた計画(広域的地域活性化基盤整備計画)の中に二地域居住に関する内容が盛り込まれた場合に、市町村が計画を策定できるという内容。市町村の計画に盛り込まれれば、建築基準法の特例などを利用して、例えば住居しか建設できない地域の規制を緩和してコワーキングスペースや地域交流カフェスペースなどの整備が可能になる。
 加えて、この計画に盛り込まれた施設整備のために使われる、空き家のシェアハウスへの改修費用やコワーキングスペースの整備費用などについては、国の補助制度を利用しやすくなるというメリットがある。

都道府県と市区町村が計画連携
NPOや民間による提案・変更も

 二地域居住を促進するために、NPO法人や民間企業などに対して指定制度(二地域居住等支援法人)を新たに創設する。指定された法人は、二地域居住を行う人に対して、住宅の情報(住まい)、仕事の確保や場所にとらわれない新たな働き方の対応(なりわい)、地域コミュニティへの参加(コミュニティ)に関する支援などをパッケージとして提供する。民間企業としては、不動産事業者のほか地域交通事業者や商工会などが想定されている。住まいの情報やコワーキングスペースの整備・運営など不動産事業者の活躍が期待されている。また、指定された支援法人は、市町村長から空き家などの情報や仕事情報、イベント情報など関連情報が提供されると共に、市町村長に対しては特定居住促進計画の作成や変更を提案できる。
 そして、市町村、都道府県、二地域居住等支援法人、民間企業、地域住民、農協、商工会議所などを構成員とする協議会を設置することができるようになる。現場で活動する関係者や地域住民の意見を反映し、「住まい」「なりわい」「コミュニティ」のマッチングなどの地域連携を促進することを狙っている。

被災時の避難先や災害復興の拠点
能登半島地震の復興プランにも

 二地域居住の促進については、災害発生時の避難先や都市からの復旧支援の拠点としての機能も期待されている。2024年1月に能登半島地震が発生したが、こうした大地震や大災害が起きた際の避難先としての二地域居住の役割も期待されている。つまり、平素から拠点とは別の地域で生活することで、いざという時もストレスなく避難できる場所が確保できる。2022年9月に国土交通省が実施した「二地域居住に関するアンケート」(表1)によると、二地域居住等の実践者に取り組みのメリットを質問したところ、「災害時の避難場所となると感じた」との回答も一定数(9.7%)あったとしている。能登半島地震における石川県の復興プラン案では、仕事や育児、教育といったやむを得ない理由で、能登と避難先での二地域居住の人が多くいることを指摘している。

 逆に、二地域居住を災害からの復興を後押しするための人材が滞在する拠点としての効果も期待されている。災害復興は年単位の長い時間が必要であり、少子高齢化が進む地域では知見や復興の担い手の人数の面でも都市部の人たちの継続的な協力が不可欠になる。能登半島地震でも、災害復興支援を契機に二地域居住を始める都市住民も出始めており、石川県の復興プラン案でも、多様な地域から週末などに能登での復興活動を行うことを想定した支援組織や、二地域居住のモデル構築の検討を示している。
 今回の法改正でも解消されない課題としては、二地域居住でこれまでも指摘されていた公共サービスの〝タダ乗り〟だ。〝タダ乗り〟とは、住民税を納めていない二地域居住者がさまざまな地域でのサービスを受けること。二地域居住者が出したゴミは地域で処理しなければならないし、生活に必要な子供の教育や公共施設の利用を止めることはできない。地方自治体の立場からは二地域居住者が増えるとコスト負担も増すというジレンマを抱えることになる。
 二地域居住では、住民票を移さない二地域居住者に対して、公共サービスのコストを負担してもらえる新たな仕組みづくりも今後、検討していくべきだろう。

担い手に期待される空き家バンク
山形県上山市、開業希望者に総合的な支援

 改正広域的地域活性化法では、都市から地方への人の流れであるUIJターンを含む若者や子育て世帯を中心に二地域居住へのニーズが高まっていることを法改正の背景として挙げている。また、デジタル化の進展で自由に働く場所が選べるようになり、都市住民が地方で生活しやすい環境が整ってきており、まずは移住や定住よりも敷居が低い二地域居住を実践してもらい、地方への人の流れをつくって、それを拡大させることを狙っている。二地域居住において、空き家や空き店舗などの活用は不可欠であり、各地の「空き家バンク」は二地域居住推進の担い手としても期待されている。
 山形県山形市に隣接する上山市のNPO法人かみのやまランドバンクは、地元の不動産事業者や行政などが協力し、中心市街地の活性化の取り組みとして空き家・空き店舗を活用して店を開くことを希望する人に対して物件を紹介し、資金調達から事業企画、内装デザイン、地域住民との関係づくりまでを支援している。
 具体的には、かみのやま温泉駅西口の空き店舗をランドバンクがサブリースして開業支援した蕎麦とカフェの店「harappa(はらっぱ)」がある。山形市在住の女性が上山市まで通い、経営を行っている。かみのやまランドバンク設立の前年には、埼玉県から移住してきた夫婦が空き家を自己資金でフルリノベーションして、地野菜料理店「厩戸(うまやど)」を開業。ランドバンクの設立準備メンバーが、空き家の紹介や補助金の紹介などの支援を行った。現在では県外からも顧客が訪れ、平日も予約で埋まる人気店に成長した。

「harappa」改修工事中※

オープン直後の店内(2021年5月)※

※撮影:明海大学 小杉学教授

キーマンの存在の有無大きく
担い手育てるため制度活用を

 このように実績がある地域の担い手は、今回の法改正をどう捉えているのか。かみのやまランドバンクの副理事長でもある、明海大学不動産学部の小杉学教授は「(二地域居住に地域が)何を期待しているのかにもよるが、特に地域の担い手は商業をするくらいでないと難しいのではないか」と指摘する。前述の開業の支援でも、希望者は地域を再生しようという人ではなく、自己実現やビジネスをしようとする人たちであり、本気でビジネスに取り組むからこそランドバンクも地域コミュニティとの仲介がうまくいくのだという。
 そこには地域で支援を行うキーマンとなる人が不可欠で、二地域居住においても法改正で盛り込まれた特定居住促進計画の作成や変更を提案できる制度は、主体的に取り組む地域の担い手がいてこそ有効に機能すると分析する。こうした担い手を育てるために新たな制度を有効に使えるのかが、二地域居住を浸透させるためのカギとなりそうだ。

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