トップ > 国土交通省・最新の動き > VOL.205 令和7年版土地白書について
2025
12.10
2025年5月27日に「令和7年版土地白書」が閣議決定されましたので、その概要について紹介します。
土地白書は、土地基本法(平成元年法律第84号)の規定に基づき、土地に関する動向等について、毎年国会に報告しているもので、本年版は、「令和6年度土地に関する動向」、「令和6年度土地に関して講じた基本的施策」、「令和7年度土地に関する基本的施策」の3部から構成されています。
今回は第1部「土地に関する動向」について、概要を紹介します。
国土交通省「地価公示」により、2025年1月1日時点における全国の地価動向をみると、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇幅が拡大しました。
三大都市圏の平均変動率でみると、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇幅が拡大しました。東京圏及び大阪圏では上昇幅の拡大傾向が継続していますが、名古屋圏では上昇幅がやや縮小しました。
地方圏では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇しました。地方圏のうち地方四市(札幌市、仙台市、広島市及び福岡市)では、上昇幅がやや縮小しましたが、その他の地域ではおおむね拡大傾向が継続しています。
全国の地価は、景気が緩やかに回復している中、地域や用途により差があるものの、三大都市圏では上昇幅が拡大し、地方圏でも上昇傾向が継続するなど、全体として上昇基調が続いています。
住宅地については、低金利環境の継続等により、引き続き住宅需要は堅調であり、地価上昇が継続しています。特に東京圏や大阪圏の中心部等において高い上昇を示しています。また、交通利便性や生活利便性に優れ、転入者が多い地域では、堅調な住宅需要に支えられ、比較的高い上昇が継続しています。他にも、リゾート地・観光地では、外国人向けの別荘・コンドミニアム需要や地元の住宅需要等を背景に、引き続き高い上昇となった地点が見られます。
商業地については、主要都市では、店舗・ホテル等の需要が堅調であり、オフィスについても空室率の低下傾向や賃料の上昇傾向によって収益性が向上していることなどから、地価上昇が継続しています。また、駅周辺等マンション需要との競合が見られる地域では、高い上昇を示しています。他にも、外国人を含めた観光客が増加した観光地では、引き続き高い上昇となった地点が見られ、再開発事業等が進展している地域では、利便性やにぎわいの向上への期待感等から、地価上昇が継続しています。
大手半導体メーカーの工場が進出している地域では、関連企業も含めた従業員向けの住宅需要のほか、関連企業の工場用地や事務所・ホテル・店舗等の需要も旺盛となっており、引き続き住宅地、商業地、工業地ともに高い上昇となっています。好調なeコマース市場による大型物流施設用地等に対する需要を背景として、高速道路等へのアクセスが良好で労働力も確保しやすい工業地では、引き続き高い上昇となった地点が見られます。一方で、令和6年能登半島地震等により、大きな被害を受けた地域では、地価が大きく下落しています。
【地価変動率の推移(年間)】
国土交通省では、日常的に利用されていない土地に関する土地所有者の意識を把握するため、「所有している土地に関するアンケート調査」を2024年度に実施しました。当該調査によると、日常的に利用されていない土地の所有者(当該土地所有者の家族及び今後相続で所有する予定の者を含む。)に対し、土地の管理状況を聞いたところ、「管理が行き届いていない」が41.8%、「管理は行き届いている」が41.5%、「どちらとも言えない」が16.6%となっており、「管理が行き届いていない」と「管理は行き届いている」がほぼ同数となっています。
これまで、政府として地域が抱える課題の解決に向けた様々な施策が講じられてきたところですが、土地政策の分野においては、企業等の民間事業者が中長期にわたる適切なマネジメントを通じて、「ヒト」「地域」「地球」の課題解決に取り組むことで、「社会的インパクト」を創出し、地球環境保全も含めた社会の価値創造に貢献するとともに、不動産の価値向上と企業の持続的成長を図る「社会的インパクト不動産」の推進が期待されているところです。
そこで、本年の土地白書においては、「社会的インパクト」を与える土地利用として「民間投資を活かした地域の活性化」をテーマに全国の先進的な取り組みを紹介しています。
地域経済・産業を活性化する土地利用
◯ 官民連携による新たな交流拠点の形成(福井県敦賀市)
「TSURUGA POLT SQUARE
『otta』」は福井県敦賀市の敦賀駅西地区に官民連携により整備された複合施設です。新幹線開業を機に、観光客向けの物販や飲食店だけでなく、地域住民向けの公設民営の書店やカフェ、子育て支援施設等の設置により、駅前に新たな地域の交流拠点を形成しています。
当該施設は設計と運営の一体公募により、市と民間事業者、指定管理者が連携して資金スキームを含めた持続可能な運営環境の構築が図られています。
開業1年で当初見込んでいた年間40万人を上回る年間70万人の来場者を記録するなど、地域経済・産業の活性化につながる土地利用が行われています。
【TSURUGA POLT SQUARE otta(福井県敦賀市)】
◯ LRT整備や駅前開発等を通じた沿線投資の拡大(栃木県宇都宮市)
栃木県宇都宮市では、バスや自家用車への依存により発生していた慢性的な渋滞を解消するため、鉄道駅と工業団地を結ぶLRTの整備を行いました。主要停留場には乗換施設を設置し、LRTとバスや自動車等の様々な交通との接続を図るなど、公共交通と自動車が共存する社会への転換を目指しています。
あわせて宇都宮駅東口において、LRT駅に直結した交流広場を中心に、ホールや商業施設等を整備してにぎわいを創出すると共に、沿線の工業団地等においては新たな投資の拡大へとつながっています。
【宇都宮駅東口地区(栃木県宇都宮市)】
地域の風土を活かした新たな土地利用
◯ 田園風景を活かした宿泊施設等の整備(山形県鶴岡市)
山形県鶴岡市では、地域にある「田んぼ」の風景に価値を見出し、ホテルとキッズドーム(屋内型遊戯・教育施設)の整備が行われました。
バイオテクノロジーの研究施設が集積する鶴岡サイエンスパーク内において、地域住民と観光客の双方が活用できる空間を創出し、持続可能な地域の実現を推進しています。
このような取組により、もともと観光地ではなかった田園地帯に現在では宿泊客だけでも年間約6万人が滞在しており、地域の風土を活かした地域経済・産業の活性化につながる土地利用が行われています。
【SUIDEN TERRASSE(左)及びKIDS DOME SORAI(右)(山形県鶴岡市)】
◯ 温泉街全体の面的再生(山口県長門市)
山口県長門市の長門湯本温泉では、廃業旅館の跡地や河川、道路等の公共施設を幅広く活用し、温泉街全体を面的に再生する取組が行われています。
市・地元企業・投資家・外部専門家等が地域一体でプロジェクトに参画し、旅館の跡地を含めた低未利用土地の新たな利用が図られています。
こうした取組により、長門市を訪れる観光客数は2023年には約200万人と前年から2.4%増加しました。
【長門湯本みらいプロジェクト(山口県長門市)】
地域の健康福祉を増進する土地利用
◯ 民有地の住民への開放による地域交流の促進(東京都世田谷区)
東京都世田谷区にオープンした「SETAGAYA
Qs-GARDEN」では、民間事業者が自社のグラウンド跡地にスポーツ施設、分譲マンション、高齢者住宅、交流施設等を整備し、健康的に暮らし続けるための多世代交流型のプロジェクトを実施しています。
既存の緑を活かした広場や公園を整備し、地域住民との交流イベントを定期的に開催するなど、地域の健康福祉の増進と地域交流の促進につながる土地利用が行われています。
【SETAGAYA Qs-GARDEN(東京都世田谷区)】
◯ 市有地における民間主導の野球場と周辺施設の整備(北海道北広島市)
北海道北広島市では、市がプロ野球球団を誘致し、新球場に加えてキッズエリア、屋外アスレチック、スノーパークなどのアクティビティ施設、クリニックモール、高齢者住宅などの健康福祉施設等を、民間事業者が市有地に一体的に整備しました。
さらに民間事業者は市と連携し、北広島駅西口の低未利用地において複合交流拠点施設の整備を行っています。
民間の調査会社によると、周辺開発を含む新球場の開業が市域にもたらす経済効果を年間約500億円(直接効果のみ)と試算(道内全体では波及効果を含めて年間約1,100億円)されており、市有地を中心とした地域の健康福祉の増進と地域経済及び産業の活性化につながる土地利用が行われています。
【北海道ボールパークFビレッジ(北海道北広島市)】
地域の付加価値を高める環境共生の土地利用
◯ 自然と共生する暮らしの実現に向けた施設整備(東京都調布市)
東京都調布市にある「深大寺ガーデン」は、植木圃場として使われていた生産緑地に整備された、賃貸住宅とレストランから構成される複合施設です。
ハーブや野菜を育てる農園を整備し、地域住民との交流の場とすることで、地域コミュニティの形成に寄与しています。
敷地内は可能な限り舗装せず、地域環境との共生を目指して敷地の約70%を緑地とし、土の面が残されており、土と地下に埋設された雨水タンクにより、雨水流出を抑制するなど、地球環境に配慮した土地利用が行われています。
【深大寺ガーデン(東京都調布市)】
◯ 生物多様性に配慮した住宅地の整備(熊本県阿蘇市)
民間事業者が熊本県阿蘇市の阿蘇くじゅう国立公園内で生物多様性に配慮した住宅地(約36,000㎡の敷地内に全29区画)を開発した事例「ロイヤルシティ阿蘇一の宮リゾートASONOHARA」では、住宅開発に際して地元産の植物を植栽する等、草原を再生して阿蘇の自然環境を再現しています。
また自然環境を維持するため、継続的に木々の育成、剪定などを実施しており、さらに堆肥づくり等の自然保全活動も行うなど、地球環境に配慮した土地利用が行われています。
【ASONOHARA(熊本県阿蘇市)】
今回は、土地白書のうち第1部「土地に関する動向」について概要を紹介しました。土地白書は、国土交通省ホームページにおいて全文を公表していますので、土地に関する各種統計データや政府の基本的施策について参照する際などに活用いただければと思います。
詳しくは、国土交通省の土地白書 を参照ください。
※執筆の時期は、2025年11月末となります。
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