トップ > 国土交通省・最新の動き > VOL.180 「農地付き空き家」の取り組みについて
2023
11.8
国土交通省では、「農地付き空き家」の活用促進に向けて、関係省庁と連携し、先進的な取り組みやノウハウの横展開、全国の市町村等や不動産流通関係団体への情報発信に取り組んでいます。今般、農地法の改正により、農地の権利移動に係る下限面積要件が廃止され、小規模な農地が取引されやすくなったことで、今後一層「農地付き空き家」の活用が進むことが期待されます。今回は、この改正を踏まえた「農地付き空き家」の取得手続き等についてご紹介します。
人口減少等により地域社会の維持が課題となっている地方部の市町村の多くでは、移住・定住の促進に取り組んでいます。これらの地域では、空き家や耕作放棄地等の発生・増加にも直面していることから、移住先で「農林水産業に従事したい」、「趣味としても農業を楽しみたい」といったニーズを持つ移住希望者等に、空き家とこれに付随する小規模な農地がセットになった「農地付き空き家」を活用してもらうことが有効と考えられます。
農地を取得する際は、農地法(昭和27年法律第229号)に基づき、農地の権利取得に係る農業委員会の許可が必要であり、従来は、原則として、取得後の農地面積の合計が50a(北海道は2ha)以上であることが許可要件の1つとされていました。空き家に付随する農地は小規模でこの下限面積要件を満たさないことが多いため、農地法には、農業委員会が地域の実情に応じてこれよりも小さい面積を「別段の面積」として定めて許可することを可能とする特例が設けられていました。島根県雲南市、兵庫県宍粟市・佐用町をはじめとする市町村では、この特例を活用し、当該市町村が運営する空き家バンクに登録された空き家に付随する農地の取得において、下限面積要件を例えば1aまで緩和するなどの取り組みが行われてきました。
国土交通省では、農林水産省の協力の下、「農地付き空き家」の円滑な活用に資する関連制度や手続きの流れ、各市町村や農業委員会の取り組み事例等について取りまとめた「『農地付き空き家』の手引き」を2018年3月に公表し、全国の市町村等や不動産流通関係団体に周知してきたところです。
●農地法の改正
農業者の減少・高齢化が加速する中で、認定農業者等の担い手だけでなく、経営規模の大小にかかわらず意欲を持って農業に新規参入する者を地域内外から取り込み、これらの者による農地の利用を促進する観点等から、2023年4月1日に「農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律」(令和4年法律第56号)により改正された農地法が施行され、農地の権利取得の許可に係る下限面積要件が廃止されました。なお、その他の要件(農地の全てを効率的に利用すること、必要な農作業に常時従事すること、周辺の農地利用に支障がないこと)については、今般の法改正で変更はなく、これまでと同様に農業委員会において許可の可否が判断されます。
●「農地付き空き家」の取引に係る手続きの変更点
下限面積要件の廃止に伴い、「農地付き空き家」を売買・賃貸借するに当たって農業委員会において別段の面積を定めることが不要になったことから、2023年3月に、国土交通省では、全国の市町村等や不動産流通関係団体等に「『農地付き空き家』の手引き」の取り扱いの変更についてお知らせしたところです。
今後の「農地付き空き家」の売買・賃貸借の主な流れは、以下のとおりです(下図参照)。
国土交通省では、「農地付き空き家」の活用促進に向けて、以下のような先進的な取り組みの横展開や補助制度等の情報提供等に取り組んでいます。
●先進的な取り組みの周知
「『農地付き空き家』の手引き」では、空き家バンクの活用促進の取り組みや、移住希望者等に向けたサポート体制の構築及び体験プログラムの提供、助成事業の紹介等の先進的な取り組み事例を紹介しています。こうした「農地付き空き家」の活用を進める上で参考となるノウハウについて、引き続き周知を図ってまいります。
●「農地付き空き家」の改修等への支援
国土交通省では、市町村が移住希望者向け住宅等として空き家を活用する場合、当該空き家の取得費(用地費を除く)や改修費等について「空き家対策総合支援事業」により支援しており、「農地付き空き家」についても活用することができます※。
※参考 空き家対策総合支援事業
●「全国版空き家・空き地バンク」を活用した情報発信
国土交通省では、2018年4月から本格運用を開始した「全国版空き家・空き地バンク」を通じて「農地付き空き家」の物件等の情報を発信しています。「農地付き空き家」の売買・賃貸借にご関心のある方は、「全国版空き家・空き地バンク」を参照ください。
下限面積要件の廃止を受けて小規模な農地が取引されやすくなったことで、都市の若者を含めた地方移住への関心を地方の活性化につなげるため、今後一層「農地付き空き家」の活用が進むことが期待されます。国土交通省では、引き続き関係省庁と連携し、「農地付き空き家」に関する先進的な取り組みやノウハウの横展開、全国の市町村等や不動産流通関係団体への情報発信に取り組んでまいります。
詳しくは、国土交通省ホームページ「「農地付き空き家」の手引き」を参照ください。
※執筆の内容は、2023年10月末時点によるものです。
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