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VOL.178令和5年版土地白書について

「令和4年度土地に関する動向」及び
「令和5年度土地に関する基本的施策」

Report
  • 国土交通省
  • 不動産・建設経済局
  • 土地政策審議官部門
  • 土地政策課

2023

9.13

2023年6月13日に「令和5年版土地白書」が閣議決定されましたので、その概要について紹介します。

土地白書とは

土地白書は、土地基本法(平成元年法律第84号)の規定に基づき、土地に関する動向等について、毎年国会に報告しているもので、本年版は、「令和4年度土地に関する動向」、「令和4年度土地に関して講じた基本的施策」、「令和5年度土地に関する基本的施策」の3部から構成されています。
今回は第1部「土地に関する動向」について、概要を紹介します。

令和4年度の土地に関する動向

国土交通省「地価公示」により、2023年1月1日時点における全国の地価動向をみると、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。
三大都市圏の平均変動率でみると、全用途平均・住宅地は東京圏、大阪圏及び名古屋圏のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。商業地は東京圏及び名古屋圏において2年連続で上昇し、上昇率が拡大するとともに、大阪圏では3年ぶりに上昇に転じました。
地方圏では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。地方圏のうち地方四市(札幌市、仙台市、広島市及び福岡市)では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも10年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。地方四市を除くその他の地域では、全用途平均・商業地は3年ぶり、住宅地は28年ぶりに上昇に転じました。

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で弱含んでいた地価は、Withコロナの下で、景気が緩やかに持ち直している中、地域や用途等により差があるものの、都市部を中心に上昇が継続するとともに、地方部においても上昇範囲が広がるなど、新型コロナウイルス感染症拡大前への回復傾向が顕著となりました。
住宅地については、都市中心部や生活利便性に優れた地域では、住宅需要は堅調であり、地価上昇が継続し、生活スタイルの変化に伴う需要者のニーズの多様化により、郊外部にも上昇範囲が拡大しています。また、地方四市は上昇率が拡大しており、地方四市の中心部の地価上昇に伴い需要が波及した周辺の市町では、高い上昇率を見せています。
商業地については、都市部を中心に、店舗需要は回復傾向にあり、堅調なオフィス需要やマンション用地需要等から地価の回復傾向がより進んでいます。また、国内来訪客が戻りつつある観光地や、人流が回復しつつある繁華街でも、店舗等の需要の回復が見られており、多くの地域で地価は回復傾向にあります。

【地価変動率の推移(年間)】

地価変動率の推移(年間)

国土交通省では「土地問題に関する国民の意識調査」(以下「意識調査」)を毎年行っています。2022年度の意識調査によると「土地は預貯金や株式などに比べて有利な資産か」という質問に対し、「そう思う」と回答した者の割合は17.9%、「そうは思わない」と回答した者の割合は28.1%、「どちらともいえない」と回答した者の割合が35.7%となりました。過去の調査結果では、2009年度意識調査から2021年度意識調査まで「そうは思わない」の割合が「そう思う」の割合を上回る結果が続いており、今回の意識調査でも「そうは思わない」の割合が「そう思う」の割合を上回りました。

【土地は預貯金や株式などに比べて有利な資産か】

土地は預貯金や株式などに比べて有利な資産か

適正な土地の利用・管理及び円滑な取引に向けたデジタル技術の活用

人口減少等を背景に、所有者不明土地等の外部不経済をもたらす土地の増加が懸念されています。これを踏まえ、データの連携基盤の整備を進めるとともに、インフラ整備・防災対策、土地の適正な管理、不動産流通等の各分野において、デジタル技術を活用していくことが必要です。

●情報連携基盤の整備

○オープンデータ、ベース・レジストリ

オープンデータへの取り組みにより、国民参加・官民協働による諸課題の解決、経済活性化、行政の高度化・効率化等が期待されています。「ベース・レジストリ」を指定し、データベースの整備を進め、2025年度に情報の一元管理を開始すべく、マスターデータの整備に取り組んでいるところです。具体的には、各地方公共団体が保有する都市計画基礎調査情報のオープンデータ化を推進しています。また、G空間情報センターは、産官学の様々な機関が保有するデータを公開し、2023年1月には、登記所備付地図データの無償公開が開始されました。なお、登記所備付地図は、地籍図が最大の供給源となっており、データ整備の観点からも地籍調査を推進しています。

○3次元点群データ

3次元点群データは、航空機や車両に搭載したレーザスキャナを用いて地形や建物等の位置や高さ等の情報を大量に集めることで、その形状を立体的に表現するものです。3次元点群データを活用して作成される3次元地図は、都市開発や浸水想定、自動車の自動運転、ドローンの運行管理等の多様な分野での活用が期待されています。

【3次元点群データを用いた浸水対策計画立案】

3次元点群データを用いた浸水対策計画立案

●土地の適正な利用及び管理におけるデジタル技術の活用

○Project PLATEAU

Project PLATEAUでは、全国約130都市の3D都市モデルのオープンデータ化を実現するとともに、データ仕様やプロジェクトの成果をガイドブックシリーズ等として公開し、地方公共団体における3D都市モデルの整備等を支援しています。今後、建築BIM及び不動産IDとの一体的な運用により、高精細なデジタルツインを構築し、都市開発・維持管理の効率化等を目指しています。

【3D都市モデルを活用するメリット(例)】

3D都市モデルを活用するメリット(例)

○流域治水におけるDX

気候変動による、水災害の頻発化、激甚化に対応するため、DXにより防災・減災対策の高度化・効率化を推進しています。

【実証実験基盤(デジタルテストベッド)の整備イメージ】

実証実験基盤(デジタルテストベッド)の整備イメージ

○エリアマネジメントDX

住民ニーズを的確に捉えたきめ細かい都市サービスを継続的に提供するため、身近な地域におけるまちづくり活動の高度化を推進しています。

○農林水産省地理情報共通管理システム

農地の面積や所在地等の農地情報を一元的に管理する「農林水産省地理情報共通管理システム」(eMAFF地図)を開発しています。農地台帳、水田台帳等の農地情報を、農地の区画情報を基に作成したデジタル地図に紐付けることで、現場の農地関係業務を抜本的に効率化するものです。将来的には、自動運転やドローン等を用いたスマート農業、衛星画像等による現地確認や災害状況の把握等の活用も検討されています。

○森林情報のデジタル化

森林施業の集約化に向け、国・地方公共団体等の主体が保有する情報を一元的に管理し、地方公共団体間の連携、林業経営体へのデータ提供を効率的に行うため、「森林クラウドシステム」の仕様やデータ形式の標準化を行い、都道府県等によるシステムの導入を促進しています。森林クラウドシステムは、地域ごとの森林管理の特徴や関係者のニーズに応じてカスタマイズが可能であることから、森林資源の管理にとどまらず災害対策等への活用も期待されています。

【森林クラウドを活用した森林施業の集約化のイメージ】

森林クラウドを活用した森林施業の集約化のイメージ

●不動産流通における活用

○不動産取引のオンライン化

不動産取引においては、オンラインによる重要事項説明や書面の電子化が進められています。また、不動産取引価格情報や防災情報等の不動産関連情報を地図上に重ね合わせる「土地・不動産情報ライブラリ」の構築にも取り組んでいます。

【不動産取引のオンライン化に向けた取り組みの概要及び経緯】

不動産取引のオンライン化に向けた取り組みの概要及び経緯

○不動産DX

ITやAI等を用いて不動産業の新たなサービスを提供する不動産テックが普及しており、物件情報の発信等の不動産の流通ステージに応じた様々なサービスが提供されています。また、所有する不動産に応じた最適な活用法を診断するサービスも提供されており、不動産の有効活用につながることが期待されています。

【不動産流通分野で提供される不動産テックサービス(例)】

サービス事例 内容
不動産価格の可視化・査定 マンションの売却価格をAIやビッグデータを駆使して複数の不動産会社に一括見積依頼を行うサービス
最適土地活用診断 所有する土地に合わせた活用方法が簡単に分かる最適土地活用診断サービス
クラウドファンディング インターネットを通じて個人を中心とした投資者から資金を集め、不動産への投資を行うサービス

土地白書の公表について

今回は、土地白書のうち第1部「土地に関する動向」について概要を紹介しました。土地白書は、国土交通省ホームページにおいて全文を公表していますので、土地に関する各種統計データや政府の基本的施策について参照する際などに活用いただければと思います。

国土交通省

詳しくは、国土交通省ホームページ「土地白書」を参照ください。

※執筆の内容は、2023年7月末時点によるものです。

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