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VOL.92

災害危険区域・土砂災害警戒区域

~住まい選びで知っておきたい「災害リスク」とは?~

執筆住生活ジャーナリスト 田中 直輝

2026

9.16

 2026年7月28日に熊本県で最大震度7の大規模地震が発生しました。まずは、被災された方々へお見舞いを、亡くなられた方々へお悔やみを申し上げます。同県では10年前の2016年4月にも大規模な地震災害が発生しました。その復興が着実に進められているなかでの出来事であり、非常に残念で仕方ありません。「災害は忘れた頃にやってくる」と言いますが、それを地でいくような出来事になってしまいました。日本国内で暮らす以上、地震災害には常に警戒を怠ってはならないと、改めて感じられた方も多いのではないでしょうか。今回の地震災害を契機に、住まいを選ぶ際に知っておきたい「災害危険区域」「土砂災害警戒区域」を中心に、災害リスクの確認方法について見ていきましょう。

復旧作業中の熊本城天守閣付近(2026年2月撮影)

「災害危険区域」「土砂災害警戒区域」とは

 「災害危険区域」とは、津波や高潮、河川の氾濫や内水氾濫などによる危険が著しい区域について、建築基準法第39条の規定に基づき地方自治体が条例で指定するものです。区域内では、災害から住民を守るため、住宅などの建築が禁止されたり、建築する際に一定の制限が設けられたりする場合があります。
 対象となる災害や建築制限の内容は、自治体の条例によって異なります。河川の氾濫や内水氾濫に限らず、急傾斜地の崩壊や地すべり、土石流、雪崩などを対象としている例もあります。そのため、住まいを購入したり建築したりする際には、その土地が災害危険区域に指定されていないか、指定されている場合にはどのような制限があるのかを確認することが大切です。
 一方、「土砂災害警戒区域」(通称:イエローゾーン)は、土砂災害防止法に基づく制度で、急傾斜地の崩壊や土石流、地すべりなどが発生した場合に、住民の生命や身体に危害が生じるおそれがある区域です。この区域に建築自体の制限はなく、指定されると市町村によって危険性の周知やハザードマップの配布、避難体制の整備が進められます。
 さらに、イエローゾーンのうち、建物が損壊し、住民の生命や身体に著しい危害が生じるおそれがある区域は「土砂災害特別警戒区域」(通称:レッドゾーン)に指定されます。住宅などを建築する場合には、建物の構造などに一定の制限が設けられます。
 「災害危険区域」と「土砂災害警戒区域」は名称が似ていますが、それぞれ根拠となる法律や指定の考え方が異なります。大切なのは、名称だけで判断するのではなく、自分が住もうとしている土地にどのような災害リスクが想定され、どのような制限や対策が必要なのかを確認することです。

災害危険区域=建築を制限して危険を避ける側面が強い
土砂災害警戒区域=危険を周知し、警戒避難体制を整える区域

ハザードマップでリスクを知る

 近年は豪雨災害が頻発するなど災害リスクが年々高まっています。そこで各自治体ではハザードマップを作成し、その情報を公開しています。避難所の場所や土砂災害の危険性がある地域などをわかりやすく表示したもので、まずハザードマップなどで皆さんがお住まいの地域にどのような災害リスクがあるのかを確認しておくことが大切です。

東京都新宿区の「洪水ハザードマップ」(新宿区HPより)

 不動産業界においても、防災に関する説明の重要性が高まっています。宅地建物取引業法では、水防法に基づき作成された水害ハザードマップにおける対象物件の所在地が、重要事項説明の対象となっています。また、災害危険区域など法令に基づく建築制限や、土砂災害警戒区域などの区域内についても、説明の対象となります。
 「この土地や建物にはどのような災害リスクがあるのか」など、具体的な生活をイメージできるよう丁寧に説明する姿勢が求められるわけです。住まいを購入・賃借するときには、不動産会社から説明を受けるだけでなく、自分でもハザードマップなどを確認し、どのような災害リスクが想定されている土地なのかを把握しておくことが大切です。そして、災害リスクについて分かりやすく説明し適切な対策を提案できることが、不動産会社や住宅会社、工務店の善し悪しを見極める大切なポイントにもなります。

土地とともに建物の安全性も確認を

 土地の災害リスクとあわせて、建物そのものの安全性を確認することも大切です。現在の新築住宅は、現行の耐震基準に適合することが求められています。一方、築年数が経過した住宅では、建築時期や耐震改修の有無などを確認しましょう。
 1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物は、いわゆる「新耐震基準」に基づいて建築されています。それ以前の建物は旧耐震基準に基づいており、耐震性能が十分でない場合があります。築年数だけで判断せず、建物の耐震性能や過去の被災・修繕状況などを確認することも大切です。
 不安がある方は耐震診断や耐震補強をされることを強くお勧めします。各自治体では近年、耐震診断・補強の補助金制度を設けるなど住まいの安心安全の確保に力を入れていますので、利用されると良いでしょう。
 また、災害発生後に自宅で安全に生活を続けられるかという視点も重要です。今回のように真夏に発生した災害や、2024年1月の能登半島地震のような厳冬期の災害では、停電や断水などライフラインの断絶によって生活環境が悪化し、高齢者や子ども、障害をお持ちの方などをはじめ、体調を崩すリスクも高まります。安心して住み続けられる住まいであることは、災害後の生活を守るうえでも大切です。
 全半壊せず住み続けられる住まいが増えることは、地域の復旧・復興の手助けになります。行政などの支援を被害の大きかった方々に集中しやすくなるからです。大規模災害では、生活再建や復旧に長い時間を要する場合があります。だからこそ、住まいを選ぶ段階でできる備えには大きな意味があります。

 住まいを選ぶ際には、「災害危険区域」や「土砂災害警戒区域」などの意味を知り、ハザードマップなども活用しながら、その土地の災害リスクと建物の安全性をあらかじめ確認しておきましょう。

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