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VOL.89
スマート変更登記
執筆HFオンウェイ合同会社代表社員/「住宅新報」元編集長 福島康二
2026
6.17
2026年4月1日から、不動産の所有者(所有権の登記名義人)が住所や氏名を変更した場合、変更の日から2年以内に変更登記を行うことが義務化されました。正当な理由なく違反したときには、5万円以下の過料が科されます。そうしたなか、義務化により所有者に生じる手続き上の負担軽減を目的に、法務省は「スマート変更登記」という新たな制度を創設しました。どのような制度なのか、その内容や仕組みをお伝えします。

スマート変更登記とは、不動産の所有者に住所や氏名の変更が生じた場合、法務局が一定の条件のもと、職権で変更登記を行う制度のことです。通常だと、そうした変更があれば所有者自ら法務局へ変更登記を行う必要があります。その場合、申請書を作成したり住民票や戸籍謄本など必要な書類をそろえたりする手間がかかります。これまでは、変更登記を行うかどうかは任意だったのですが、不動産登記法の改正による今回の義務化で、すべての所有者にそうした手続き上の負担が生じることになりました。その負担軽減を目的に、法務省が新たに創設した制度がスマート変更登記です。この制度を利用すれば、所有者は自ら変更登記を行う必要がなくなり、「法務局が自分に代わって変更登記を行ってくれる」ことになります。
所有者にとっては非常に便利な制度と言えますが、そもそもなぜ今回、こうした義務が課せられることになったのでしょうか。それは、所有者不明土地の増加が背景にあります。所有者不明土地とは、登記簿上の住所や氏名が古い情報のまま放置されていることなどが原因で、所有者の所在が把握できない土地のことです。法務省によると、全国の所有者不明土地を合わせると「九州の面積より広い」とも言われています。こうした土地があることで、公共事業や災害復旧事業を円滑に進められず、民間事業者間でも土地の利活用が阻害されている状況が生まれています。また、放置されたままの空き家が周辺環境に悪影響を及ぼすといった問題も生じています。
これまで任意だった変更登記の義務化により、登記簿の情報が最新の内容に保たれる見込みが高まります。そうなれば、国は所有者の所在を把握しやすくなることから、所有者不明土地の増加を防ぐことにつながると考えているようです。
それでは、スマート変更登記を利用するには、どうすればいいのでしょうか。法務省では「かんたん・無料の手続きをするだけ」と表現しており、所有者が行うことは、「氏名・住所・生年月日・メールアドレス・対象不動産」といった内容を法務局に伝えるだけです。これを、「検索用情報の申出(図1-①)」といいます。
検索用情報の申出は、書面のほか、法務省のオンラインサービス「かんたん登記・供託申請」のWebサイト上からも行えます。画面の案内に従って必要項目を入力すれば、上記内容の申出は完了します。所有者はこの申出をしておけば、今後住所や氏名に変更が生じても、「法務局が自分に代わって変更登記を行ってくれる」ことになるのです。
なお、今回の義務化は、施行日の2026年4月1日よりも前に住所や氏名を変更している所有者も対象に含まれます。そうした所有者には、「変更の日から2年以内」ではなく、2026年4月1日から2年以内、すなわち2028年3月31日までに変更登記を行うことが義務付けられています。もちろん、自ら変更登記を行ってもいいのですが、期日の2028年3月31日までに検索用情報の申出を行いさえすれば、後述のように、その後は法務局が住所等の変更の有無を確認し、本人の承諾を得た上で職権により変更登記を行う仕組みが確立されたことから、義務違反に問われることはありません。
法務局が所有者に代わって変更登記を行うスマート変更登記ですが、それはどのような仕組みで行われるのでしょうか。
各自治体には住民基本台帳というものがあり、自治体ごとに住民の氏名や住所、生年月日といった、いわゆる住民票の記載情報などが登録されています。そこには、引っ越しなどで変更が加わった情報なども登録されており、それらの情報を通じて全国共通で本人確認ができるよう「住基ネット」という形でネットワーク化が図られています。
スマート変更登記では、法務局が申出のあった検索用情報をもとに住基ネットを検索し、所有者の住所等に変更がないか確認(図1-②)します。変更が確認された場合、法務局は職権で変更登記を行うことについて所有者に意思確認の連絡を行い(図1-③)、所有者から承諾を得たら変更登記を実施(図1-④)し、その内容が不動産登記システムに登録されるといった流れです。デジタル技術を活用し、法務局が住基ネットと連携してスムーズに変更登記を行うスマート変更登記は、まさに「不動産登記のDX」と位置付けられるでしょう。
余談ではありますが、筆者も早速、検索用情報の申出をWebサイト上から行ってみたところ、手続きは容易に完了しました。筆者は過去に住所や氏名を変更したことはないのですが、今後変更が生じたとしても、自ら変更登記を行わなくて済みます。
なお、今回の義務化は法人も対象で、法人の場合は、「会社法人等番号の申出」を行うことにより、スマート変更登記を利用できるようになります。