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VOL.88

変動金利・固定金利

~どうなる金利動向? 住まい購入への影響~

執筆オペレーショナルデザイン㈱ 取締役デザイナー・データアナリスト 佐々木城夛

2026

5.20

 住宅ローンの金利は、どのように決まっているのだろうか。それは日々の買い物と同じ発想で理解することができ、仕組み自体は、決して特殊なものではない。
 例えば、青果店での野菜の販売価格は、市場での仕入値に輸送費や家賃・人件費などを加え、利益が出るよう決定されている。銀行など金融機関の融資金利も、これと同様に「販売価格」に当たり、その構成要素は主に4つである[図表1]。
 それぞれの意味は以下の通りだ。
 ⓐ資金調達(預金金利など、資金を集めるためのコスト)
 ⓑ調達外経費(人件費や店舗運営費などの経費)
 ⓒ危険負担(貸倒れなどに備える信用リスク分のコスト)
 ⓓ期待収益(金融機関の利益)
 預金は金融機関にとって事業資金の調達に当たるため、ⓐは預金金利に相当し、野菜でいえば市場での仕入値に当たる。今回は、その金利について「変動金利・固定金利」というキーワードから解説していきたい。

「基準金利>適用金利」の背景

 2026年4月現在では、市中金融機関の変動金利型住宅ローンの最低基準金利は年3.125%の模様だ。こう書くと、違和感を覚えられた方もいらっしゃったことだろう。例えば三大メガバンクのこの月の実際の変動金利型住宅ローンの最優遇提示金利は、三菱UFJで年0.945%、三井住友で年1.275%、みずほで年1.025%となっているためだ。
 この例で言えば、三大メガバンクの消費者への提示金利は、いずれも基準金利を下回っている。銀行側が、基準金利を踏まえた上で、自らの利益を吐き出す形で金利の引下げ(ディスカウント)を行っているからだ。
 そうまでしている理由は、「値引きを行ってでも取引を獲得したい」という意向によるものである。主要なものは以下の3点に集約されよう。

 ① 取引を複合化させ全体で黒字化させることで貸出金利を引き下げる
 ② 競合が激しい
 ③ 金利変動のリスクを引き受けたくない

 通常、最優遇提示金利の適用には、給与振込先の指定やクレジットカード・公共料金の口座振替などの取引が条件となる。融資で稼げなければそれ以外で稼ごうという意図に沿ったものであり、①②は表裏の関係にもある。
 中でも、住宅購入者への影響が大きいのが③である。2024年3月にマイナス金利政策は解除され、2025年以降も金利は変動し続けている[図表2]。昨年(2025年)4月7日の10年国債金利は年1.129%だったが、今年(2026年)4月6日は2.429%となり、約1年に1.3ポイント上昇した。

出典:財務省「国債金利情報」等を筆者加工。

“金融機関側の本音”を踏まえた理解が有効

 こうした動向が「金利上昇」の切り口で報じられる事象が増えている。しかしながら金融機関側の本心は、金利上昇を嫌気しているのではなく、金利が変動し、それに伴うリスクを引き受けること自体を回避したい点にある。期間の長い住宅ローンはそれだけ金利変動幅が大きくなるため、できる限り引き受けたくないのが本音だ。
 これらのそもそもの背景を理解することが、変動・固定の種別の違いに沿った利用者のメリットや注意点を理解する上で有効と考える[図表3]。

図表3:金利種別による主な違い

種別 利用者側のメリット 利用者側の注意点 利用者が被る金利変動の影響
変動 ⦿借入時の金利が低く設定される
⦿金利低下時に返済負担が軽くなる
⦿返済途中で金利が変動するため、金利上昇時に金利負担が増大するなど、返済額自体が変動する ⦿直接的な影響を受ける
⦿利息優先返済形態が一般的なため、金利が相当程度上昇すると返済金が元本まで回らず減らなくなる
固定 ⦿借入時に返済総額が確定する ⦿金利低下時に金利負担減メリットを享受できない
⦿借入時の金利が高く設定されているため、返済総額に占める元本金額が小さくなる
⦿金額・期間などを制限する金融機関や、(住宅金融支援機構の「フラット」を含め)取り扱わない金融機関もみられる
⦿相応の金利上昇分を上乗せした金利が設定されているため、例え返済中に金利が低下せずとも、上昇幅が上乗せ幅以下の範囲にとどまるようならば割高になる

出典:筆者作成。

“当初固定”は、固定型にあらず

 このほか実態上でよく誤解される事象に、「当初一定期間(だけ)固定⇒その後変動に転換」型の住宅ローンを挙げる。俗に、“当初3・5・10年固定型”などと呼ばれるものだ。
 実務者の目線では、1度でも変動すれば変動金利型融資に他ならないのだが、住宅販売事業者だけでなく金融機関側も、さも固定型のように説明する事象が認められる。図表3を参照される上では、変動型として捉えられたい。
 本稿を執筆時点(2026年4月10日現在)、近未来の金利動向については、アナリストの間で「なお上昇」との見通しが支配的だ。建売住宅や中古物件などの販売パンフレットの返済例には、提携金融機関の住宅ローンの最優遇金利を例に返済負担を示しているものが多いが、その適用金利はほぼ変動型が占める。

“とりあえず”対応には、特に注意

 一生に一度の大きな買い物と捉えられがちな住宅購入は、「借りられるだけ借りて注ぎ(つぎ)込む」「まずは毎月の返済負担を最も軽くして貯金ができたら一部返済する」意向が働きがちだ。その結果、35年変動型を選択する消費者が最も多くなっている。
 他方、金利が上昇すれば、毎月の負担が増え、貯金はしにくくなる。固定・変動を問わないが、一部返済(内入れ)や全額返済(繰上償還)時に事務取扱手数料を課す金融機関や、「毎月の返済額軽減はできず、完済日までの期間短縮だけ」など、一部返済時に一定の制限を課す金融機関も珍しくない。金利環境が変化する中で、自身の返済計画に合った選択がこれまで以上に重要となっている。トラブルの芽は増えているため注意されたい。

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