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VOL.76
未内見(未内覧)契約
執筆不動産鑑定士・中小企業診断士 竹内英二
2025
5.21
一般的に賃貸物件を借りる際には、契約前に内見(内覧)を行う。内見は入居後の無用なトラブルを避けるためにも必要だ。しかし中には、様々な理由で契約前に内見できない物件が存在する。例えば、現在の借主が入居中の物件や、新築またはリフォーム工事中の物件等は内見できないことが多い。また、遠方に住んでいる等の入居希望者側の理由による場合もある。本稿では、そのような未内見物件の契約について注意点と対策を解説する。
未内見物件は、日照や向かいの建物からの視線(プライバシーの確保)、騒音、ニオイ、寸法、設備等を確認しにくいことから、物件を見ずに借りることは一定のリスクを伴う。
内見せずに物件を選ぶ場合には、まずは内見せずとも問題が生じにくい物件を選び、加えて不動産会社から事前に必要な情報を得ることが基本的な対策となる。
以下に、内見しないときに注意すべきリスクと対策を示す。
(1)日照・見合い…特に低層階は注意が必要!
向かいの建物との距離が近い物件は、日照が遮られたり、視線が気になったりといった見合いの問題が生じやすい。特に低層階の部屋は日照が劣り部屋の中が暗くなりやすく、1階は道路の歩行者からの視線が気になる場合もある。
未内見で物件を選ぶときは、日照や見合いの懸念が生じる可能性の低い物件を選択することが対策となる。例えば、向かいの建物との距離が離れており、かつ、上層階を選ぶことが望ましい。バルコニー側の前面道路は、幅員が広い方が問題は生じにくいといえる。
(2)騒音…建物の構造を確認!
交通量の多い道路や線路に近い物件は、外部からの騒音が気になる可能性がある。また、建物構造が木造や軽量鉄骨造の場合、隣戸からテレビや電話の音が聞こえるリスクもある。
未内見で選ぶ際の対策として、大通り沿い等の物件はサッシの性能を確認することが挙げられる。例えば、窓が二重サッシになっているかを聞くことも一つの確認方法となる。
また、隣戸からの音に関しては、鉄筋コンクリート造の物件を選んだ方が騒音リスクは低いといえる。
(3)ニオイ…築年数に注目!
物件によっては、嫌なニオイが残っている可能性がある。ニオイに関しては、喫煙やペット飼育が可能な物件は異臭リスクが高いといえる。
未内見で物件を選ぶときは、自分が必要としていない限り、喫煙やペット飼育が可能な物件を避けることが対策となる。また、築年数が古い物件もカビ臭や生活臭が残っている可能性があることから、できれば新築もしくは築浅物件を選ぶことが無難である。
(4)寸法…寸法入りの図面を入手!
内見できないと寸法を測れないため、今保有しているベッドやタンス、書棚等の大きな家具が入らない、またはカーテンのサイズが合わないといった問題が生じることがある。
未内見で選ぶときは、事前に不動産会社から寸法の入った図面をもらうことが対策となる。図面の寸法には、内法(うちのり)と壁芯(へきしん)の2種類がある。内法は壁の内側から図った寸法で、壁芯とは壁の中心部から図った寸法のことである。できれば内法寸法の図面で確認することが望ましい。
またサッシの高さや、扉を開いたときのドアノブの出っ張りの寸法、押入れの仕切り棚の高さや幅の情報は図面にないことも多いため、不動産会社に確認することも適切だ。
(5)設備の状態…不動産会社に事前確認を!
設備は、備え付けの有無に関して、現地確認をしないと勘違いしたまま借りてしまうこともあるため注意したい。特に照明や室内洗濯機置場、エアコン、温水洗浄便座等は備え付けではない物件も多い。
未内見で選ぶときは、事前に不動産会社に対してどのような設備が備え付けで、何を自分で用意しなければならないかを確認することが対策となる。
希望の部屋が内見できなくても、同じ物件の他の部屋が内見できる場合には、他の部屋の内見をすることをおすすめする。他の部屋であっても、日照や見合い、騒音、設備等に関して有意義な情報を得ることができる。また、間取りや内部のつくりが同じであれば、前述の(4)寸法についても知ることができるだろう。
他の部屋を内見できなかったとしても、共用部は見せてもらうことが望ましい。共用部を見れば共用設備を把握できるし、周辺環境も確認することができる。現地を見れば日照や見合い、騒音の問題も想定しやすいため、物件選びの失敗は防ぎやすい。
内見なしで賃貸借契約を締結するには、先行申込と先行契約の2つの方法がある。
「先行申込」とは内見の前に入居申込と入居審査を完了させる方法であり、「先行契約」とは内見の前に賃貸借契約まで締結する方法だ。
先行申込は、他の人に契約されてしまうリスクはあるが、申込後のキャンセルは可能であり、いざ契約する段階になったらスムーズに契約手続きに進むことができる点がメリットだ。
内見できないことに不安が残る場合には、他の人に契約されるリスクを承知の上で先行申込を使って物件を緩く抑えておくことが望ましい。
一方で、先行契約は、他の人に物件を取られる心配はなく、確実に部屋を抑えることができる点がメリットだ。内見できなくても他の部屋の確認等によってあらかたのリスクを排除できる場合には、先行契約を活用することも有効な選択といえるだろう。
しかし、正式に「契約」をするということは、万が一キャンセルする場合には、違約金が発生してしまう、ということに注意が必要だ。
契約前には可能な限り内見をすることをおすすめするが、事情によりそれができない場合は様々な方法で対策し、トラブルなく快適な新生活をスタートしていただきたい。