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VOL.72

AI退去立会

退去時のトラブル回避&コスト削減をAIで実現

執筆株式会社案 代表取締役社長 渡辺利雅

2025

1.15

 退去立会は、非常にトラブルの多い業務として知られている。原因の一つに、賃貸契約における損傷や修繕に関するルールが複雑で、担当者の評価判断が難しいことが挙げられる。同じ損傷でも担当者によって評価が分かれることが多く、賃借人との間で意見の食い違いが発生するケースも頻発している。これにより、賃借人が「不当に高額な修繕費を請求されるのではないか」と不安を感じ、双方にとって大きなストレスの原因となっている。もう一つは、退去立会に向けた準備と現場立会そのものに物理的な時間と人手がかかるというコストの問題だ。それらを改善させることが期待できる画期的なシステムとして「AI退去立会」が注目されている。

AIアバターが24時間365日、退去立会を代行

 退去立会は、しばしばトラブルの発生源となる場面。原状回復にかかる費用負担や賃借人の責任範囲など、判断が難しいケースも非常に多く、不動産オーナーや管理業者側と賃借人の双方の認識のずれから思わぬ紛争に発展してしまう可能性も孕んでいる。そこで、よりスムーズで公正な退去立会を実現するための新しい技術として、AIを活用した「AI退去立会」が注目を集めている。

 不動産オーナーや管理業者向けに、退去立会をAIが代行する新クラウドサービス「AI退去立会」を開発したのはREMODELA株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役:福本拓磨)。このサービスは、賃借人がスマートフォンでAIアバターに対して傷や汚れの報告を行うことで、国土交通省のガイドラインに沿った修繕負担額を算出し、簡単に退去立会手続きを完了できるという優れもの。AIアバターは24時間365日、退去立会に対応してくれるのだ。

「AI退去立会」のスマートフォン画面。写真の人物がAIアバターとして対応する(「AI退去立会」公式サイトより)

「AI退去立会」のスマートフォン画面。写真の人物がAIアバターとして対応する(「AI退去立会」公式サイトより)

原状回復をめぐる退去時トラブルが絶えない

 そもそも「原状回復」とは何か。国土交通省が定めるガイドラインでは、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されている(参考: 国土交通省/原状回復をめぐるトラブルとガイドライン) 。つまり、通常の生活で生じる損耗は賃借人の負担ではなく、貸主が負担すべきものとされている。例えば、フローリングの軽い傷や壁紙の自然な日焼けなどは、通常の使用による損耗と考えられ、一方、故意に壁に穴を開けた、ペットが柱をひっかいて傷つけたといった場合は、賃借人の負担となる。

 従来の退去立会では、不動産会社担当者と賃借人が現地で立ち会い、一つ一つ部屋の状態を確認していく必要があった。このプロセスは、双方のスケジュール調整に始まり、現地での確認作業、そして結果の説明に至るまで、多くの時間と労力を要するもの。また、原状回復の範囲について、ガイドラインの解釈の違いや担当者の主観が入り込む余地があり、トラブルに発展するケースも少なくない。

国土交通省が制定している退去立会のルール(「AI退去立会」公式サイトより)

国土交通省が制定している退去立会のルール(「AI退去立会」公式サイトより)

電子サインによる合意書締結まで完結

 しかし、AI退去立会では、賃借人が自身のスマートフォンやタブレットを用いて、AIアバターとチャットをしながら部屋の傷などを撮影し、そのデータをAIが自動で解析・判定。AIは、国土交通省が制定しているガイドラインに準拠し、AI開発企業がこれまでに蓄積してきた豊富なデータに基づき、様々なユースケースを参照して判断を行う。そして貸借人の報告内容から、AIが自動で工事内容を推測し、数量や単価、負担割合について回答する。電子サインによる合意書締結まで行ってくれるので、面倒な退去手続きを丸投げできるという仕組みだ。これにより、担当者の主観に左右されることなく、公平かつ一貫した評価が提供され、トラブルの発生リスクを少なくすることが期待されている(注:AI退去立会は、賃借人から確実に退去費用を請求できるものではありません)。なお、負担割合や修繕費用の算出にはLLM(大規模言語モデル)を活用していないため、ハルシネーション(人工知能〈AI〉が事実に基づかない情報を生成する現象)が生じる心配もない。AI退去立会の後日、工事業者を現地へ派遣し、工事の見積書を受領。賃借人の報告に抜け漏れがないか確認し、最終的な請求内容を確定させるという流れになる。

時間短縮効果への期待が最大のメリット

 開発会社であるREMODELAの試算では、不動産会社にとっては、1件あたり平均約180分かかっていた現地での退去立会が、AI導入により約15分に短縮できるという報告もあり、大幅な業務効率化を実現できる可能性を秘めている。オンライン退去立会でも約90分かかっていたことを考慮すると、AI退去立会による時間短縮効果は非常に大きい。賃借人(退去者)にとっても、自分の都合の良い時間・場所で手続きを完了できるという大きなメリットがある。

 このAI退去立会の普及は、不動産業界全体に大きな変化をもたらすと予想されている。顧客サービスの向上、トラブル防止による業界の健全化、人材コストの軽減、そして業務プロセスの簡略化など、その影響は多岐に渡る。特に、人材不足が深刻化する不動産業界において、業務効率化は喫緊の課題であり、AI退去立会はその解決策の一つとして大きな期待を寄せられている。また、REMODELAのAIアバターの場合、日本語に加えて英語、中国語、ベトナム語にそれぞれ言語対応しており、各国語に対応した合意書へのサイン受領ができるメリットもあるという。

 従来の退去立会における時間や費用の負担、トラブル発生の可能性、そして多言語対応の難しさといった様々な課題を解決する手段として、AI退去立会は、不動産会社と入居者の双方にとって、そして外国人入居者にとっても、大きなメリットをもたらす革新的なサービスになりそうだ。

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