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VOL.71
サステナブル建材
執筆住生活ジャーナリスト 田中直輝
2024
12.18
近年、「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」が、国や企業の活動においてはもちろん、個人の行動規範としても重要な位置づけを占めるようになった。その影響は建築の分野にも及んでおり、持続可能な環境への配慮を重視した建築資材「サステナブル建材」の普及が進んでいる。
サステナブル建材として最も注目されているのが「木材」だ。木は自然素材であり炭素(C)を多く含むが、これは木材として製品化されても、炭素が大気中の空気(O₂)と結びつかなければ、地球温暖化物質である二酸化炭素(CO₂)に変わることがない。このため、住宅などの素材として長期間使用されると、木材はその期間CO₂を固定化し、温暖化防止に貢献するとされている。
〈各種材料製造時における1m²あたりの炭素放出量〉
出典:文部科学省・農林水産省「こうやって作る 木の学校」より抜粋
また、鉄やコンクリートに比べライフサイクルのCO₂排出量が少なく、建設時に必要なエネルギー量も軽減できる。具体的には、鉄やコンクリートはそれぞれの素材を産出、輸送、製造などをするために多くのエネルギーを使いCO₂を排出する。一方、自然素材である木材は、そうした製造までの過程でのエネルギー使用が少なくすむ。
〈住宅一戸当たりの炭素貯蔵量と材料製造時の二酸化炭素排出量〉
出典:林野庁「令和元年度 森林・林業白書」より抜粋
このほか、伐採、植林を繰り返す「循環」により健全性が保たれれば、森林は温暖化の防止や水源の保全、土砂災害の防止などといった多様な機能を果たす。そのため森林の循環に適した木材を活用することは、地球環境や社会の持続可能性に貢献するものと考えられている。加えて、森林の循環=再生可能であることも、木材がサステナブルと評価される要因である。
日本は国土の7割が森林に覆われる森林大国。しかもその多くがスギやヒノキなどの人工林で、樹齢50年程度の伐採期を迎えている。前述のような国土や社会への貢献度の高さ、そして林業の振興による地域経済の活性化、さらには数少ない自給自足が可能な資源であるという点にも木材活用を促進するメリットがあるとされている。
そうした観点から、国は木材活用の推進に取り組んでおり、2010年にはまず「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行。学校などの教育機関や自治体の関連施設などの公共建築物において、木造化・木質化が積極的に行われるようになり、同時に耐火構造などの技術開発が加速した。
2021年10月には同法律の一部改正が行われ、法律の題名が「 脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(通称:都市(まち)の木造化推進法) に変わり、法の対象が公共建築物だけではなく民間建築物にまで拡大した。同時に、農林水産省の特別の機関として「木材利用促進本部」も設置された。
その結果、近年では商業ビルを含む中・大規模建築物の木造化・木質化の事例も増え始めている。この分野は、ESG経営やSDGsが定着していたヨーロッパや北米、オーストラリアなどでいち早く進展し、すでに20階超の建物も建設されている。「都市の木造化推進法」以降、日本においても東京・日本橋で、地上18階建ての日本で最も高い木造オフィスビルの建設工事が行われているなど、民間の木造木質による中・大規模木造建築物の普及が本格化する機運が見え始めている。
【東京・日本橋の木造オフィスビル建設現場】
さて、では木材がサステナブル建材としてどのような活用をされているかだが、現状ではCLT(Cross Laminated Timber、JAS規格では直交集成板)などの集成材が主となっている。また、これまで木材の使用は戸建てなど住宅分野が中心となってきたが、その技術を応用するかたちで住宅用一般流通材(プレカット材)を利用して、店舗などを建設する「木造非住宅」の取り組みも行われている。
これらはあくまで構造材であるが、「都市の木造化推進法」に至る過程の中で行われた、特に耐火・防火に関する法規制の緩和や技術の進展の中で、内外装材としての木材活用も進められていることも付記しておく。そして、ここまでは木材について紹介してきたが、このほかにもサステナブル建材といわれる素材があるので最後に紹介しておきたい。
まず、タイルの外壁材は耐久性が高いことから住宅など多くの建築物に利用されている。素材は自然から採れる粘土であるため環境負荷が低く、光触媒加工などを施したものでは防汚機能もあるためメンテナンス時のCO₂排出量削減にも貢献する。最近は保水機能がありヒートアイランド現象の抑制にも効果があるものも見られるようになった。
このほか、リサイクル素材を活用したものもサステナブル建材と評価されている。たとえば、アパレル業界で売れ残った繊維を活用した繊維ボードを断熱材や内外装用の下地材、化粧材などとして活用する事例など、サステナブル建材は多様な広がりを見せている。もちろん、古民家再生などで使用される「古材」と呼ばれる木材もリサイクル素材だ。
これらサステナブル建材を利用した建築物の建設には、通常の建材に比べて建築コストが高額になるケースもある。国土交通省では、サステナブル建築物等先導事業(省CO₂先導型)を実施。先導性の高い省エネ化に取り組む住宅や非住宅の新築・改修に対して、補助率2分の1、限度額5億円といった支援を行い、負担軽減を図ろうとしている。住宅であれ施設であれ、建築物の世界では今後、環境配慮はますます重要なファクターになることから、サステナブル建材の活用を積極的に検討してみてはいかがだろうか。