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VOL.66
貸し農園
執筆オペレーショナルデザイン(株)データアナリスト 佐々木城夛
2024
7.17
レンタル農園や市民農園など、さまざまな名称で呼ばれる「貸し農園」。都市部で見かけることが多い小規模で短期間のものから、中〜大規模で長期間利用できるものまである。昨今、都市部に増えている要因として挙げられる「生産緑地地区の2022年問題」とともに「貸し農園」の形態についてみていきたい。
1950年代後半からの高度成長過程に、市街地の無秩序な拡大が深刻化したため、1968年に都市計画法が制定された[図表1]。さらに、1974年の生産緑地法の制定、1975年の相続税納税猶予制度の創設に続いて、1982年には長期営農継続農地制度(以下「継続制度」とする。)が創設された。
継続制度は、「10年以上の長期営農継続意思+(実際に)耕作中」を条件に、固定資産税を農地並みとする制度だ。都市農業を巡っては、この立法以降も、さまざまな制度改正や立法措置がなされた経緯が認められる。
1980年代後半のバブル経済期には、都市部の地価の著しい上昇に、「都市農地の転用によって宅地供給を促進させ、地価を引き下げて住宅問題を解決すべきである」という要請が強まった。そうした声に押される形で継続制度が1992年に廃止され、その代替策として1991年に改正された生産緑地法が1992年に施行された。改正要旨は、指定の厳しかった生産緑地地区の条件の緩和にあった。
この改正に伴って同年以降に指定を受けた生産緑地地区は、2022年3月末時点で11,926ヘクタールに及ぶ。東京で例えると、山手線内の内側の面積が約6,300ヘクタールといわれており、その2倍弱の面積となる。
「生産緑地地区の2022年問題」とは、この生産緑地地区が2022年に、指定から30年の期限を迎えることによる影響、すなわち「同時期に広域の土地がまとめて市街地に転用されかねない」ため、緑地面積が短期間に急激に縮減するだけでなく、不動産市場全体が混乱するのではないかという懸念だった。
その対策として2017年に生産緑地法が改正され、事実上の期限延長である特定生産緑地制度が創設されたほか、面積要件の緩和なども講じられた。翌2018年には、生産緑地地区の都市農地所有者が自身で作付するだけでなく、賃貸借を容易にさせるための都市農地貸借法も制定され、同年に施行された。
これらの対策の結果、2022年中に30年の期限を迎えた生産緑地地区9,273ヘクタールのうち、89.3%に当たる8,282ヘクタールが特定生産緑地の指定を受けた。それ以外の10.7%の中に農地転用が含まれることになり、共同住宅や店舗などに姿を変えたことが見込まれる。
全体としては大きな減少には至らず、懸念された市場の混乱は杞憂に終わった。1都2府8県の面積別内訳では、三重県が全体の30.5%と最も高い非継続比率となったことが特徴的だ[図表2]。
翌2023年に30年の期限を迎えた生産緑地地区は、そもそも前年に比べ非常に狭い面積であったものの、前年同様に大部分が特定生産緑地の指定を受け、10年間の期限延長が講じられた。局所的には、奈良県の全面積が3ヘクタール中、2ヘクタールが転用されるなどの事象もみられた。
貸し農園の形態は、相手先に応じ、2種に大別される[図表3]。2020年時点での関東農政局管内の経営耕地面積49万5,000ヘクタールのうち、借入地面積は20万3,000ヘクタールと41.0%を占める。農業者の相当数は他者の農園を借りて営農を行っていることにほかならず、農業者向けの貸し農園が面積ベースの大部分を占めることが想像に難くない。
![[図表3]貸し農園の形態[例示]](images/img03.png)
非農業者向けの貸し農園の中心は市民農園型であり、農林水産省の整理では、体験型も市民農園型に含まれる[図表4]。生産緑地を貸しやすくするために手当てされた都市農地貸借法に則って開設された市民農園は、企業・NPOが主体のものだけとなっていることが特徴的だ。
![[図表4]開設主体・開設方式別市民農園数[2023年3月末現在]](images/img04.png?2407)
実務上の市民農園の利用形態には、①ホームページや看板などが月額表示であっても(1年など)一定期間の利用料金の支払いを先んじて求める、②(特に自治体が開設主体でない場合には)入会金や運営費などを求める、③園芸協会や農業協同組合の場合には組合員割引などがある、などの特徴がみられる。市中金融機関の貸金庫契約は、利用希望者からは6か月または1年単位の利用料を必要に応じて先取りし、解約時に適宜払い戻す対応が一般的だが、①などはそれと似た形態だ。
これらの一方で、契約・利用後の想像以上の農耕作業量などに負担を感じ、農園から足が遠のくことで、隣接する利用者などとトラブルになる事象もみられる。一部の貸し農園では、こうしたことを見越した「フルサポートプラン」などを設定し、農耕作業を農園側に事実上委任できるサービスが選択可能となっている。
今後も、高齢化の進行に伴ってリタイア世代などに「土に触れたい」という意向がもたらされるため、貸し農園市場には相応の成長が見込まれる。健全な発展のためには、苦情の防止・抑止が一案となろう。

貸し農園(イメージ)