トップ>不動産トピックス>大規模な地震災害に遭遇すると思う都市ほど、防災への自助実施率が高い
(株)野村総合研究所(NRI)はこのたび、「住宅の防災・減災意識に関する調査(東京特別区および政令指定都市在住者へのアンケート)」の結果を発表した。東京特別区(23区)および政令指定都市20市において、本人所有の住宅に住む20歳以上の男女を対象として、平成28年9月16~20日にインターネット上で「住宅の防災・減災意識に関する調査」を実施し、2,755人の有効回答を得たもの。
近い将来、自分が大規模な地震災害に遭遇すると思うかを聞いたところ、「非常にそう思う」と回答した人の割合は、都市間に格差が生じている。最も割合が高いのは静岡市(35.7%)で(図)、次いで浜松市(28.7%)、熊本市(26.3%)、名古屋市(25.7%)の順となり、「今年(平成28年)震災を経験した熊本市を除いて、いずれも政府により東海地震や東南海地震による甚大な被害が想定されている太平洋岸地域に位置している都市」が上位になったと、NRIでは分析している。一方、最も割合が低いのは札幌市(6.9%)で、次いで京都市(7.4%)、広島市(7.6%)、北九州市(7.7%)の順だった。
またNRIでは、自身や家庭における自助として、「(1)家具類の固定」「(2)飲食料(3日分)と生活必需品の備蓄」「(3)避難場所と避難ルートの確認」「(4)家族間での安否確認の方法についての話し合い」「(5)防災訓練への参加」の5項目の実施有無を調査し、5項目の実施率の平均値を『自助実施率』と定義して、大規模地震への遭遇可能性に対する意識との関係を分析した。その結果、「近い将来、自分が大規模な地震災害に遭遇すると思うか」という設問に対して「非常にそう思う」と回答した人の割合が高い都市ほど、自助実施率が高い傾向にあることが分かった。
※NRI 「住宅の防災・減災意識に関する調査」
NRIでは、まず、自治体が実施する防災行政として「(1)防災教育」「(2)リスクの見える化」「(3)防災対策に関する知識の普及」「(4)家庭の防災対策に関する市役所の相談体制」「(5)防災対策に必要となる資金援助」の5項目を、住民による評価や自身の認知度に基づき、各項目1~5点で指数化し、その上で、都市別に「項目別の指数の平均値」「5項目の平均値」を算定して「評価点」とし、自助実施率との関係を分析した。その結果、自治体の防災行政に対する住民評価点が最も高いのは仙台市・静岡市((1)~(5)の平均2.8点)で(表)、次いで神戸市・名古屋市(同2.7点)、東京特別区・浜松市(同2.6点)の順となり、「東日本大震災を経験した仙台市や大規模地震のリスクが高いとされている静岡市などで高い結果となった」としている。
項目別に見ると、全体で評価点が低いのは「(3)防災対策に関する知識の普及」(1.7点)、「(2)リスクの見える化」(2.2点)だった。また、「自治体の防災行政に対する評価点が高い都市ほど、自助実施率が高い傾向にある」という。
こうした調査結果を受け、NRIでは「住民の危機意識を高め、自助を促進するためには、防災行政の果たす役割が重要であり、特に『リスクの見える化』とその内容理解を図る工夫が重要である」と見ている。
※NRI 「住宅の防災・減災意識に関する調査」