トップ>不動産トピックス>築20年超の新耐震基準住宅、約9割が現行の耐震基準に不適合
日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(以下、木耐協)はこのたび、今後取引が増えると思われる昭和56年~平成5年の住宅に焦点を当てた「木耐協 耐震診断 調査データ」(平成26年1月15日発表)を発表した。
「昭和56年~平成5年に建てられた木造住宅の耐震性と耐震基準適合証明書取得に必要な工事費用目安」についての分析では、平成18年4月~平成25年11月の間に木耐協で耐震診断を実施した木造在来工法2階建て以下の建物のうち、昭和56年~平成5年の間に着工された住宅7,043件について分析した。
住宅の評点※1について、各年度の平均を見ると、昭和56年度(777棟)の0.514に対し、平成5年度(446棟)では0.708となり、「新しい住宅ほど耐震性が高まる」結果となった。この要因について、木耐協では、「鉄筋コンクリートの基礎が普及(鉄筋コンクリート基礎の割合が5割から約9割に上昇)」「柱と土台・梁のつなぎ目に取り付ける接合金物が普及していった」「劣化による耐力の減少が少ない」の3つが考えられるとしている。
また、上部構造評点1.0を超える住宅を「耐震基準に適合している」、上部構造評点1.0を下回っている住宅を「耐震基準に適合していない」として集計したところ、適合していない住宅は6,386棟(90.67%)となり(図1)、昭和56年以降に建てられた新耐震基準住宅であっても、9割が耐震基準に適合していないことが分かった。建築基準は、昭和56年6月と平成12年6月に大きく改正されたが、「1回目の改正は反映されているものの、2回目の改正が反映されていないため現行の耐震基準を満たしていない住宅が大半」だという。
なお、耐震基準に適合していない6,386棟について、耐震基準に適合させるために必要な耐震改修工事費用の目安を、(一財)日本建築防災協会が公表している「木造住宅の耐震改修の費用-耐震改修ってどのくらいかかるの?-」に基づいて算出すると、平均は 163.91万円となった。
※1 1.5以上が「倒壊しない」、1.0~1.5未満が「一応倒壊しない」、0.7~1.0未満が「倒壊する可能性がある」、0.7未満が「倒壊する可能性が高い」
※日本木造住宅耐震補強事業者協同組合 「木耐協 耐震診断 調査データ」(平成26年1月15日発表)
「耐震診断結果」についての調査では、平成18年4月1日~平成25年11月30日の7年8ヶ月の間に、木耐協で実施した耐震診断のうち、木耐協で耐震診断結果の詳細を把握している1万9,279件の耐震診断結果について分析した。耐震診断対象となる住宅は、昭和25年~平成12年5月までに着工された木造在来工法2階建て以下の建物。
耐震診断を受診した建物のうち、現行の耐震基準※2に適合しない住宅は91.33%(「倒壊する可能性がある」17.19%、「倒壊する可能性が高い」74.13%)を占めた。
築年数別に見ると、昭和55年以前に建てられた旧耐震基準建物(9,638件)では98.04%(同11.60%、86.44%)、昭和56年以降に建てられた新耐震基準建物(9,641件)でも、84.62%(同22.79%、61.83%)が、現行の耐震基準を満たしていなかった。
また、木耐協で工事金額を把握している330件について耐震補強費用を見てみると、平均施工金額は、全体では148万3,082円、旧耐震基準建物(154件)では177万8,068円、新耐震基準建物(176件)では122万4,967円となった(図2)。金額の分布を見ると、150万円未満の工事を実施したのは全体のうち193件(58.48%)で、このうち116件(35.15%)は100万円未満の工事だった。旧耐震基準建物では、150万円未満は70件(45.45%)で、このうち100万円未満は39件(25.32%)、新耐震基準建物では、それぞれ123件(69.89%)、77件(43.75%)となった。旧耐震基準住宅は新耐震基準住宅に比べ、評点が全体に低いため、「工事箇所が多くなり工事金額も高額になる」と木耐協では見ており、「旧耐震基準住宅の場合はまずは国・自治体の補助金を検討し、それでも予算が厳しい場合は、予算の範囲で出来る最大限の補強工事を行う」といった工事提案力が耐震補強事業者に益々求められると指摘している。
※2 建築基準法の考え方は、「大地震時には人命を守ること」「中地震の場合には建物という財産を守ること」を目標とするが、耐震診断では人命を守ることに重点を置き、「大地震時に倒壊しない」ための耐震性確保を目標としている。
※日本木造住宅耐震補強事業者協同組合 「木耐協 耐震診断 調査データ」(平成26年1月15日発表)