トップ>不動産トピックス>新耐震基準建物の84%が現行の耐震基準を満たさず
日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(以下、木耐協)は耐震補強工事費用と築年数・1階床面積の関係を主なテーマとする「木耐協 耐震診断 調査データ」(平成25年8月29日発表)を発表した。
「耐震補強工事費用と築年数・1階床面積の関係」についての調査では、平成23年12月1日~平成25年3月31日の間に木耐協で耐震診断を実施した3,351件のうち、「耐震補強にかけた金額」について回答があった283件について分析した。
耐震補強工事費用は、全体では平均150万8,929円(図)。築年数別に見ると、「築19年以下」(14.49%)では94万9,853円、「築20~29年」(30.74%)では130万8,624円、「築30~39年」(35.69%)では169万9,827円、「築40年以上」(19.08%)では189万9,074円と、「築年数が10年上がるごとに、補強工事の平均金額は30万円前後上昇する結果」となった。木耐協ではその原因として、「耐震診断結果に大きな影響を与える【建物の劣化】が築年数の経過とともに進むことや、築30年以上の建物は現行の耐震基準に比べて壁の量が不足していることなどにより、工事の内容が多くなることが考えられる」としている。
また、1階床面積別に見たところ、耐震補強工事費用の平均額は、「60㎡未満」(36.75%)では128万5,245円、「60~80㎡未満」(36.04%)では148万1,344円、「80㎡以上」(27.21%)では184万7,587円と、「1階床面積が増えるに連れて補強工事の費用も増加する傾向がはっきりと現れる結果」となった。木耐協では、「建物の面積が広いほど必要となる壁の量は増加するため、工事内容は面積が広いほど多くなる傾向があるということを、この結果によって裏付けている」と指摘している。
※日本木造住宅耐震補強事業者協同組合 「木耐協 耐震診断 調査データ」(平成25年8月29日発表)より抜粋して作成
「耐震診断結果」についての調査では、平成18年4月1日~平成25年6月30日の7年3ヶ月の間に木耐協で実施した耐震診断のうち、木耐協で耐震診断結果の詳細を把握している1万8,870件の耐震診断結果について分析した。なお、耐震診断の対象となるのは、昭和25年~平成12年5月までに着工された木造在来工法2階建て以下の建物。
調査によると、昭和55年以前に建てられた旧耐震基準建物(9,420件)のうち、97.99%(「倒壊する可能性がある」11.74%、「倒壊する可能性が高い」86.25%)は現行の耐震基準※を満たしていないことが分かった(表)。昭和56年以降に建てられた新耐震基準建物(9,450件)でも、84.43%(「倒壊する可能性がある」22.94%、「倒壊する可能性が高い」61.49%)は現行の耐震基準を満たしていなかった。
また、木耐協で工事金額を把握している283件について耐震補強費用を見てみると、平均施工金額は、全体(283件)では150万8,929円、旧耐震基準建物(135件)では183万9,649円、新耐震基準建物(148件)では120万7,259円となった。金額の分布を見ると、164件(57.95%)は150万円未満の工事を実施しており、このうち、97件(34.28%)は100万円未満。200万円以上の件数は、旧耐震基準建物では58件(42.96%)だったのに対し、新耐震基準建物では28件(18.92%)と、2倍以上の開きがあった。木耐協では、「昭和55年以前の建物は昭和56年以降の建物に比べて壁の量が不足しており、工事箇所も多くなる傾向が見られる」と見ており、「国や自治体の助成金を積極的に活用することにより、1棟でも多くの建物の耐震補強を実施して、来るべき大地震に備える必要がある」としている。
※建築基準法の考え方は、「大地震時には人命を守ること」「中地震の場合には建物という財産を守ること」を目標とするが、耐震診断では人命を守ることに重点を置き、「大地震時に倒壊しない」ための耐震性確保を目標としている。
※日本木造住宅耐震補強事業者協同組合 「木耐協 耐震診断 調査データ」(平成25年8月29日発表)より抜粋して作成