トップ>不動産トピックス>高齢期の住み替えは利便性・安心安全を求めダウンサイズ傾向、リバースモーゲージに期待も
(一社)不動産流通経営協会はこのたび、「高齢期における住替え意向に関する把握調査」を発表した。高齢者世帯の住み替えの実態や今後の住み替え意向、住み替えを支援するリバースモーゲージの認知度や印象を把握するために、1都3県(千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県)に居住する50歳以上の男女(世帯主)を対象として、平成24年1月にインターネットによるアンケート調査を実施し、1,601件の有効回答を得たもの。回答者の内訳は、50歳代471人、60歳代472人、70歳代469人、80歳以上189人、持ち家一戸建て619人、分譲マンション554人、賃貸住宅等428人。
現在のシニア・シルバー世代は、住み替え前の住まいが持ち家一戸建ての場合は74.9%が持ち家一戸建てに、住み替え前が分譲マンションの場合は74.3%が分譲マンションに住み替えている。しかし、住み替えの時期別に見てみると、住み替え前が持ち家一戸建ての場合、11年以上前は持ち家一戸建てへの住み替えが91.0%を占めていたのに対し、直近10年では39.2%にまで減少(図1)。代わって分譲マンションへの住み替えが4.5%から35.4%へ、賃貸住宅等への住み替えは4.5%から25.4%へと増加している。住み替え前の住まいが分譲マンションの場合は、11年以上前は5.0%だった賃貸住宅等への住み替えが、直近10年では17.8%と増加している。
住み替え理由としては、持ち家一戸建てから分譲マンションや賃貸住宅等への住み替えの場合は「『子供の独立』、『老朽化』、『利便性』が多く挙げられている」こと、住み替え時の年齢別に見た場合は「年齢が上がるにつれて『子供の独立』、『利便性』、『病院やケア施設の近く』、『バリアフリー』、『耐震性』の割合が高まっている」ことから、同協会では「子供の独立や家の老朽化を一つのきっかけとして、利便性や安心安全を求めたコンパクトな分譲マンションや賃貸住宅等への住み替えが進んでいると考えられる」としている。
また、現在の住まいの購入金額を見てみると、持ち家一戸建て、分譲マンションともに「購入時の年齢が上がるにつれて、高額物件の割合が高まっている」一方、「3,000万円未満の購入も一定数見られ、2極化の傾向がうかがえる」。さらに、「購入時の年齢が上がるにつれて、高額な自己資金額の割合が高まっている」ことから、同協会では「借入の難しい高齢者が、従前住宅の売却などにより、高額な自己資金を準備し、住み替えを行っている」と見ている。
※(一社)不動産流通経営協会 「高齢期における住替え意向に関する把握調査」
これからの住み替えについて、全体の約7割は「住み替える予定はない」と回答しているが、「50~60歳代賃貸住宅等居住者の2~3割、50~60歳代分譲マンション居住者の1割強が積極的な住み替え意向を示している」。住み替え意向があっても、「住み替えたいが、諸事情により難しそうだ」と回答している人は半数以上を占めており、「その主な理由が『金銭面での不安感』」だった。
そこで、高齢者が保有している住宅を担保として、生活資金等の融資を受け、高齢者(契約者)の死亡時等に当該住宅を処分して一括返済する「リバースモーゲージ」について、知っているかどうかを聞いたところ、認知度は26.6%(名前は聞いたことがある16.6%、ある程度は知っている8.6%、詳しく知っている1.2%、活用したことがある0.2%)だった。また、リバースモーゲージの仕組みを活用し、住み替え先の購入資金の借入を行い、契約終了時(利用者の死亡時等)に、その住み替え先を売却して元利一括返済を行う「住み替えを支援するリバースモーゲージ」については、全体(無回答を除く1,531人)の3.9%が「活用したい」、26.2%が「関心がある」と回答しており、合計30.1%が関心を見せている(図2)。特に、70歳代の分譲マンション居住者では「活用したい」が3.8%、「関心がある」が31.4%と割合が高くなっており、「期待度が高いことがうかがえる」。
同協会では、「資金調達の難しい高齢者に対して、金銭的負担の軽減により住み替えを支援するリバースモーゲージの仕組みについて、今後、期待が高まる可能性がある」と見ている。
※(一社)不動産流通経営協会 「高齢期における住替え意向に関する把握調査」