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土地に関する不動産価格の推移-(1)地地価LOOKレポート

前回は、年1回公表される地価公示に基づく土地価格の状況について、主要都市や地域別の住宅地・商業地・工業地などの動きを取り上げました。今回は、より詳細に土地の価格動向を知ることができる地価LOOKレポートについて紹介したいと思います。

主要地区ごとの土地価格の推移

地価LOOKレポートは、主要都市の地価を先行的に示す高度利用地区の地価動向について、国土交通省が四半期ごと(毎年1月・4月・7月・10月)に公表している資料です。このデータは、鑑定評価員(不動産鑑定士)が対象地区の地価動向について不動産鑑定評価に準じた方法により把握した結果や、各地区の不動産関連企業や金融機関等にヒアリングを行った結果を国土交通省が集約して作成しています。調査は、三大都市圏や地方中心都市で地価動向を把握する必要性が高い100地区(東京圏43地区、大阪圏25地区、名古屋圏9地区、地方中心都市等23地区/住宅系32地区・商業系68地区)を対象としています。

平成27年第3四半期(平成27年7月1日~10月1日)のレポートをみると、東京圏では上昇が41地区、横ばいが2地区でほぼ全ての地区が上昇しています。大阪圏は上昇が22地区、横ばいが3地区となり約9 割が上昇しました。名古屋圏は特に上昇が目立ち、平成25年第2四半期から10 回連続で全ての地区が上昇しています。一方、地方圏は上昇が15地区、横ばいは8地区で、上昇は約7 割にとどまり、三大都市圏に比べて上昇の動きはやや鈍くなっています(図表1・2)

図表1 地区毎の四半期変動率の推移-東日本エリア

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図表1 地区毎の四半期変動率の推移-東日本エリア

図表2 地区毎の四半期変動率の推移-西日本エリア

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図表2 地区毎の四半期変動率の推移-西日本エリア

出典:「主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~ 2015年11月」 国土交通省土地・建設産業局 地価調査課

用途別にみると、住宅系における上昇が26地区、横ばい6地区となり、約8 割が上昇しました。特徴的な地区としては、東京都千代田区番町が2四半期連続で3~6%上昇しています。商業系では上昇が61地区、横ばいが7地区となり、約9 割が上昇しました。特徴的な地区は、リニア新幹線の新駅が着工された名古屋市中村区太閤口で6%以上の上昇がみられました。

また、新虎通りの開通で大規模再開発が進んでいる東京都港区虎ノ門地区や、関西空港へのアクセスが良くインバウンド消費に沸く大阪市中央区なんば地区も上昇幅が3~6%に拡大しています。このほか地方中心都市では、福岡市博多駅周辺の商業地が3~6%上昇しており、九州の拠点都市としてオフィス需要や店舗需要が拡大している様子がうかがえます。

各地区の詳細情報も掲載

上記のように地価LOOKレポートでは、全国を代表する100箇所の地価動向がわかりやすい矢印表で示されています。直近1年分の動きも合わせて見られるため、直感的に各都市の地価の推移を捉えることができます。また、各地区の矢印をプロットした地図も掲載されており、どの地区が上昇・下落しているのか一目でわかるようになっています。

レポートではこのほか、各地区の市況に関する詳細情報も表形式で掲載されています(図表3)。地区ごとに地価に与える要因を鑑定評価員が判断し、△上昇・増加、□横ばい、▽下落・減少の3区分で、土地または土地・建物の取引価格・取引利回り・取引件数・投資用不動産の供給・オフィス賃料・店舗賃料・マンション分譲価格・マンション賃料の各項目を評価しています。対象地区の特徴についても、鑑定評価員のコメントが記載されており参考になります。

図表3 地区ごとの詳細情報 (札幌市中央区・宮の森地区の例)

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図表3 地区ごとの詳細情報 (札幌市中央区・宮の森地区の例)

出典:「主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~ 2015年11月」 国土交通省土地・建設産業局 地価調査課

札幌市中央区宮の森地区を例にとると、土地の取引価格や新築マンション価格が上昇する一方、利回りは低下しています。取引件数は横ばいですが、投資用不動産の供給が増えています。鑑定評価員のコメントでは、新築マンション販売が改善しており中古マンションも含めて価格は上昇傾向にあるようです。今後もマンション供給は拡大し、将来的に地価の上昇傾向は続くことがわかります。

このように、地価LOOKレポートは年1回の公表にとどまる地価公示や都道府県地価調査を補足する資料として活用できます。定性的な評価のため価格は表示されませんが、四半期単位の価格の方向性(ベクトル)は把握でき、地価だけでなく不動産市場全般の動きも捉えることができます。特に、業界のプロである鑑定評価員のコメントは一般消費者が普段触れることのない情報であり、貴重なデータと言えるでしょう。自宅を売り買いする場合にも、まずはこうした公的資料をうまく使いこなし、賢い選択に結び付けたいものです。

 詳しくは「国土交通省・地価LOOKレポート」を参照して下さい。



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