トップ>相場・取引動向>データトピックス>既存住宅市場の現状-(9)中古戸建住宅築年数
前回は、2大都市圏における中古戸建住宅の建物面積について取り上げました。ここでは、首都圏・近畿圏について、中古戸建住宅の築年数に関する動きを紹介したいと思います。
前回示したように、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)と近畿圏(大阪・兵庫・京都・滋賀・奈良・和歌山)の中古戸建住宅建物面積は、平成12年以降緩やかな拡大基調にありましたが、ここ数年はあまり変化していません。中古戸建住宅の売れ筋としては、面積よりも築年数の変化が目立ちます。そこで今回は、取引物件の平均築年数と築年帯別シェアの変化についてみることにします。
東日本不動産流通機構※1が公表している首都圏の成約中古戸建住宅の平均築年数をみると、平成26年は20.5年で20年前の平成7年(13.8年)に比べて6.7年古くなりました(図表1)。新規登録物件も平成26年が21.2年と、比較可能な平成12年(15.6年)と比べると5.6年古くなっています。なお、ここでいう成約物件の築年数は、上記の機構に報告された実際の取引物件の戸当たり平均築年数を、新規登録物件は販売目的で機構に登録された売り出し物件の平均築年数を示します。
過去20年間を振り返ると、前回みた建物面積は拡大傾向に歯止めがかかっていたのに対し、築年数はほぼ一貫して古くなっていることがわかります。新築住宅の供給が減る中で、流通市場の中古物件は基本的に古くなる傾向にありますが、一時的に築浅物件のシェアが拡大した時期もみられました。築年帯別の件数シェアをみると、ミニバブルが指摘された平成19~20年頃は築10年以下の物件が3割近くを占め、中古マンションと同様に比較的高額な築浅の戸建住宅が取引されていました。
平成12年の成約物件の平均築年数は新規登録物件より古い状況にありましたが、その後は逆転し、平成26年は成約物件が新規登録物件より0.7年新しくなっています。平成26年の築31年以上の新規登録物件シェアは22.7%に対して成約物件は20.2%とやや低く、市場で流通する中古戸建住宅の中では、比較的新しい物件が選ばれる傾向にあります。
ただ、築31年以上を中心とする経年物件のシェアは拡大しており、その動きは平成20年のリーマンショック以降加速しています。景気の先行き不透明感などから多少古くても安価な物件を求める動きが強まりましたが、アベノミクスが本格化した平成25年以降も中古戸建価格は低迷し、取引物件の経年化は続いています。ここ1~2年は、タワーマンションや収益物件の人気などから中古マンション価格は上昇していますが、実需中心の中古戸建市場では安価な物件を求める傾向が続いているようです。
近畿圏は首都圏以上に、中古戸建住宅の経年化が進んでいます(図表2)。近畿圏不動産流通機構※2が公表した成約物件の平均築年数は、平成26年が24.3年と首都圏より3.8年古く、比較可能な平成13年(17.7年)と比べても6.6年古くなりました。新規登録物件は平成26年が24.1年と平成21年(21.3年)より2.8年古くなり、首都圏に比べて2.9年古い物件が流通しています。
近畿圏では成約物件と新規登録物件の築年差がほとんどありませんが、これは首都圏に比べて人口減少が進み新築住宅の供給が少ないことや、安価な経年物件を志向する動きが強いことなどが考えられます。築年帯別シェアをみても、平成26年の築31年以上の比率は成約物件が32.4%と高く、新規登録物件も32.7%とほぼ同じ水準です。築10年以下の築浅物件は16.0%と首都圏の22.0%に比べて低く、近畿圏の方が古い物件に対する抵抗感は少ないようです。
少子高齢化など人口構造の変化に加え、リーマンショックや消費税率アップなどの影響もあり、持家と戸建分譲住宅を合わせた新築戸数は10年前と比べて2割減少し、20年前からは4割以上減りました。中古市場で流通する築浅物件のストックも減少しており、中古戸建市場でリフォームや新築同様の増改築などを前提に、経年物件を選択する傾向が強まっています。
ただ、経年物件の選択が増えると、住宅の不具合に対する注意はますます必要となります。近年は、建物検査(インスペクション)や瑕疵保険制度などが充実してきていますが、購入前には物件のチェックや検査等をできる限り行うことが求められます。不動産業界では、取引時の検査や修繕等の保証・保険の提供、住まい方に応じたリフォームやリノベーションなどをワンストップで提案するサービスも広がってきました。経年物件ではこうしたサービスもうまく活用しながら、中古戸建住宅の賢い選択に結び付けたいものです。
→ 詳しくは「(公財)東日本不動産流通機構ホームページ」及び「(公社)近畿圏不動産流通機構ホームページ」を参照
このサイトに掲載している情報の無断転載を禁止します。著作権は(公財)不動産流通推進センター またはその情報提供者に帰属します。