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既存住宅市場の現状-(4)中古マンション専有面積

前回は、2大都市圏の中古マンション取引価格について取り上げました。今回も、首都圏・近畿圏について、中古マンションに関する専有面積の動きを紹介したいと思います。

首都圏の中古マンション成約・新規登録物件の専有面積

前回示したように、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)と近畿圏(大阪・兵庫・京都・滋賀・奈良・和歌山)の中古マンション価格は、バブル崩壊やリーマンショックに伴う下落を経て、近年は再び上昇する傾向がみられます。住宅購入時の条件として、価格とともに重要な判断材料となるのが住宅の規模です。ここでは、取引物件の専有面積の推移についてみることにしましょう。

東日本不動産流通機構※1が公表している首都圏の成約中古マンションの専有面積をみると、平成26年度は64.3㎡で20年前の平成7年度(63.3㎡)を0.7㎡上回りました(図表1)。一方、新規登録価格は平成26年度が59.2㎡で、平成7年度(62.5㎡)に比べると3.3㎡狭くなっています。ここでいう成約物件の専有面積とは、上記の機構に報告された実際の取引物件の戸当たり平均面積を、新規登録面積は販売目的で機構に登録された売り出し物件の平均面積を指します。

図表1 首都圏中古マンションの専有面積の推移

図表1 首都圏中古マンションの専有面積の推移

図表1 成約物件の専有面積と価格の変化

資料:(公財)東日本不動産流通機構のデータをもとに作成
注)首都圏:東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県

過去20年間を振り返ると、価格や件数の動きに比べて物件の面積はあまり変化していません。特に成約物件は緩やかな拡大・縮小を繰り返しながら、62~65㎡台で推移しています。新規登録物件の専有面積はミニバブルが生じた平成15年度から18年度にかけて縮小しましたが、これは東京都区部を中心に成約価格が上昇し、先高感による売り控えから規模の大きな高額物件が減少したことが一因として挙げられます。

このように、住戸規模に対する買主側のニーズは大きく変わらないのに対し、売主側の意向は市場の変化に左右されやすい傾向にあります。ただ、実際に取引された成約物件も、細かくみると時代とともにその姿は変化しています。図表1の下図は、成約物件の専有面積と価格のポジションをみたものですが、平成26年度に至るまで買主が購入した中古マンションの平均面積は、価格の上昇・下落を受けながら少しずつ変化してきました。

20年間で専有面積が最小だった平成9年度(62.2㎡)と最大の21年度(65.8㎡)の差は3.6㎡で、成約価格が最も安価な13~14年度の面積は64㎡前後と現在と変わりません。15年度以降の価格は大きく上昇しましたが、26年度は14年度に比べてほぼ同じ面積で800万円以上高額な物件が購入されています。これは、以前に比べてタワーマンションなどが多い都区部の物件シェアが高まったためです。面積が最も拡大した21年度の前後は、リーマンショックや東日本大震災の影響で取引量が減少しました。この時期は需要の減退から単価が下落し、同じ価格でより広い物件が購入可能となっていました。

アベノミクスが本格化した25年度以降は、一部の富裕層や投資家などが相対的に住戸規模の小さい都区部の高額物件を購入する動きも目立ち、首都圏の平均面積は縮小する一方で成約価格は上昇しています。

近畿圏の中古マンション成約・新規登録物件の専有面積

近畿圏は、首都圏に比べて取引される中古マンションの専有面積が広くなる傾向にあります。近畿圏不動産流通機構※2が公表した成約物件の専有面積は、平成26年度が70.0㎡と首都圏より5.7㎡広く、平成7年度(68.6㎡)に比べて1.4㎡拡大しました。新規登録物件は平成26年度が68.7㎡と平成7年度(69.9㎡)比で1.2㎡縮小しましたが、首都圏より9.5㎡広く縮小幅も首都圏ほど大きくありません(図表2)

図表2 近畿圏中古マンションの専有面積の推移

図表2 近畿圏中古マンションの専有面積の推移

図表2 成約物件の専有面積と価格の変化

資料:(公社)近畿圏不動産流通機構のデータをもとに作成
注)近畿圏:大阪・兵庫・京都・滋賀・奈良・和歌山の2府4県

近畿圏で成約物件の専有面積が大きく拡大したのは、首都圏と同じく平成9年度から15年度にかけてでしたが、拡大幅は1.4㎡と首都圏(2.6㎡)より小さいものでした。違いが現れたのは、25年度以降です。前述のように首都圏では都区部を中心に小規模物件の取引が拡大しましたが、近畿圏では比較的ゆとりのある阪神間の高額物件や郊外の滋賀県や奈良県の物件取引が拡大し、平均面積を押し上げました。

成約価格が安価な水準にあった15年度の専有面積は70.0㎡でしたが、26年度は同じ面積で400万円以上高額な物件が購入されています。ただ、首都圏より取引価格の上昇率は低く、比較的安価な郊外も含めて広めの中古マンションが取引される傾向にあります。面積が最も拡大した21年度は、近畿圏でもリーマンショックの影響から売り物件が減少し、単価が下落したことでより広い物件が購入可能となりました。

以上のように、物件の住戸規模についても価格と合わせてみることで、市場の動きやその影響を捉えることができます。住み替えは、結婚や子どもの成長・独立など家族構成の変化が大きな契機となりますが、市場環境によって流通する物件の広さも影響を受けることに留意すべきです。現状ではファミリー層が中心の中古マンション市場ですが、今後は小世帯化が進むことで専有面積の縮小が顕在化していくことも考えられます。

※1 公益財団法人 東日本不動産流通機構(東日本レインズ):北海道、東北6県、関東7都県、甲信越3県の1都1道15県を対象に、事業者間で不動産流通物件の情報交換を行うために、国土交通大臣が指定した唯一の公益法人。
※2 公益社団法人 近畿圏不動産流通機構(近畿レインズ):近畿2府4県を対象に、事業者間で不動産流通物件の情報交換を行うために、国土交通大臣が指定した唯一の公益法人。

 詳しくは「(公財)東日本不動産流通機構ホームページ」及び「(公社)近畿圏不動産流通機構ホームページ」を参照



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