トップ>不動産トピックス>マンション内の良好なコミュニケーションが、適正な維持管理に寄与
国土交通省の国土交通政策研究所はこのたび、「マンションの適正な維持管理に向けたコミュニティ形成に関する研究」の最終報告を公表した。マンションの維持管理とコミュニティとの関係などを明らかにするとともに、適正な維持管理に必要なコミュニティの形成を促進するために取り組むべき事項をとりまとめたもの。主な調査内容は、全国の分譲マンション管理組合を対象としたアンケート調査(1,094件)、コミュニティ形成の先進的な取り組みを行っている管理組合、自治会、管理会社、自治体等を対象としたインタビュー調査(36件)など。
この調査研究は、建物の適正な管理や防犯・防災、地域とのコミュニティの希薄化などマンションをめぐる様々な課題が顕在化しているなか、対応策の一つとして、「マンション居住者間のコミュニティや地域との良好な関係を日頃から構築することが有効」との考えから行われたもの。
マンションの居住者同士のコミュニケーションの度合いについて見てみると、「多くの世帯で見られる」のは、「あいさつをかわす」が44.6%、「顔がわかる」が32.7%、「会話をする」が12.2%となっており、同研究所では「『顔がわかる』『あいさつをかわす』『会話をする』といった基礎的な相互認知型のコミュニケーションは居住者間で相当程度とられている」と見ている(図1)。一方、「一緒に遊ぶことがある」は3.1%、「重要な相談やお願いができる」は2.4%が「多くの世帯で見られる」となっており、「コミュニケーションの度合いが深くなると、居住者間で見られる割合は低下」している。
また、マンションにおけるイベントや行事、サークル活動などのコミュニティ活動については、「『顔がわかる』といったコミュニケーションが見られる割合が高いと、コミュニティ活動は活発になる傾向」があるとしている。
図1:居住者同士のコミュニケーションの度合い
※国土交通省 国土交通政策研究所「マンションの適正な維持管理に向けたコミュニティ形成に関する研究」
マンションの管理組合運営上の課題として最も多かったのは「区分所有者の高齢化」(47.3%)。次いで「管理組合活動に無関心な区分所有者の増加」(44.6%)、「理事の選任が困難」(37.4%)となっている(図2)。これらの課題について、相互認知型のコミュニケーションの程度ごとに見てみると、程度が高いほど課題を抱える割合が低くなっている(図3)。
また、同研究所では、「コミュニティが形成されているマンションでは、居住者トラブルに管理組合内での話し合いにより対応できている割合が高く、居住者による防犯・防災活動、高齢者支援などにも取り組まれている」としており、居住者間のコミュニティがマンションの建物管理以外の課題への対応にも発展する土台になっていると見ている。
図2:管理組合運営上の課題
図3:相互認知型コミュニケーション×管理組合運営上の課題
※国土交通省 国土交通政策研究所「マンションの適正な維持管理に向けたコミュニティ形成に関する研究」