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平成27年版土地白書の公表について。「平成26年度土地に関する動向」及び「平成27年度土地に関する基本的施策」を公表

2015年9月9日

Report
国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 

平成27年6月に「平成27年版土地白書」が閣議決定されましたので、今回はその内容についてご紹介します。

土地白書とは

土地白書は、土地基本法(平成元年法律第84号)の規定に基づき、土地に関する動向及び政府が土地に関して講じた基本的な施策並びに土地に関して講じようとする基本的な施策について、毎年国会に報告しているものです。

土地白書の概要

「平成26年度土地に関する動向」では、平成26年度の地価・土地取引等の動向について報告しているほか、人口減少社会に対応した土地利用や自然災害の発生の可能性を踏まえた土地利用について、先進的な取り組みを紹介しています。加えて、平成26年度に政府が土地に関して講じた施策について報告しています。「平成27年度土地に関する基本的施策」では、平成27年度に政府が土地に関して講じようとする基本的施策について記述しています。
今回は「平成26年度土地に関する動向」の第1部「土地に関する動向」を中心にご紹介します。

第1部第1章 平成26年度の地価・土地取引等の動向

平成26年度の我が国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減等により、年度当初には個人消費等に弱さが見られたものの、実質GDPが10-12月期にはプラスに転じる等、年度を通じて緩やかな回復基調が見られました。

平成27年地価公示の結果については、全国平均では、住宅地は下落したものの、その下落率は縮小し、商業地は下落から横ばい(0.0%)に転じました。三大都市圏平均で見ると、住宅地、商業地の地価はともに上昇を継続し、住宅地の5割弱の地点、商業地の7割弱の地点でそれぞれ上昇しています。一方、地方圏では、下落幅は縮小したものの依然として下落傾向が続いており、住宅地、商業地ともに7割弱の地点で下落しています。

図表1 地価変動率の推移(年間)

平成26年の新築住宅着工戸数については、約89万2千戸と5年ぶりに減少に転じました。これは、消費税率引き上げ前の駆け込み需要の影響が大きかった前年と比較すると9.0%減、前々年と比較すると1.1%増となっています。平成26年のマンション新規発売戸数については、全国で約8万3千戸(前年比21.0%減)となっています。

図表2 利用関係別新設住宅着工戸数の推移

このほか、各種統計データを用いて経済指標や地価・土地取引等の動向を紹介し、本章では平成26年度の不動産市場の動向を総括しています。

第1部第2章 人口減少社会に対応した土地利用

我が国の将来人口は、平成22年の約1億2千8百万人から、40年後の平成62年には24%減となる約9千7百万人にまで減少することが見込まれています。このため、今後、人口が減少する地域においては土地に対する需要が減少するため、住宅の低密度化や生活に必要となる施設の点在化が生じ、住民生活の維持に支障をきたす可能性が懸念されます。

本章では、居住の低密度化や施設の点在化が引き起こす、日常生活や社会活動における持続性の低下を中心的な問題として取り上げ、地方都市と農山村地域等における課題と先進的な取り組みについて紹介しています。具体的には、地方都市にあっては、中長期的には都市機能や居住機能の集約を誘導することにより、住宅、医療・福祉施設、商業施設等がまとまって立地し、民間や行政の提供するサービスに容易にアクセスすることができる都市の形成が望まれるとした上で、「コンパクトシティ」の形成等に関して先進的な取り組みを紹介しています。また、農山村地域等にあっては、今後、集落において生活サービス機能やコミュニティ機能を提供する場がますます減少し、それらが点在化することにより、高齢者をはじめとする地域住民のアクセスが困難となる可能性があることを踏まえ、「歩いて暮らせるまちづくり」や、交通ネットワークの形成等と相まって複数の生活サービスを歩ける範囲内に集め、生活を支える拠点を構築する「小さな拠点」について先進的な取り組みを紹介しています。

先進的な取り組みにおける共通点は、(1)長期的な視野を持って都市や地域のビジョンを描いていること、(2)自治体が住民との積極的な対話・連携を行い、ニーズを最大限把握するよう努めるなど、住民と向き合いながらまちづくりを進めていること、(3)公共交通や福祉をはじめとする他の取り組みとも連動させながら、都市や地域のビジョンに沿って、土地利用に関する取り組みを進めていることの3点であるとし、総括しています。

第1部第3章 自然災害の発生の可能性を踏まえた土地利用

近年、我が国では、東日本大震災をはじめとする自然災害の発生により多くの被害がもたらされ、インフラ整備のみではなく、日常の住まい方を含めたソフト面での災害対策の重要性が強く認識されるに至りました。今後も、大規模な自然災害が発生する可能性が高いものと想定されることから、災害リスクに関する土地情報の共有、土地利用の規制や誘導、住民等の連携に基づいた防災に資する空間の確保等による災害リスクの軽減といった、災害発生の可能性を踏まえた土地利用が進められているところです。

本章では、我が国を取り巻く災害リスクを概観した上で、土地情報の整備・発信と土地利用の規制・誘導について取り組みを紹介するとともに、複数主体の連携による空間の確保と地域的な防災活動の事例について取り上げています。具体的には、アプリ等を用いた災害リスクに関する土地情報の整備・発信に取り組む事例や、密集市街地の危険空き家の除却と地域住民による跡地管理に取り組む事例について取り上げています。

先進的な取り組みの中には、自治体が住民との間で密にコミュニケーションを図りながら、土地情報の発信や土地利用の規制・誘導等の施策を有効に組み合わせることにより、安全な地域づくりの実現を総合的に推進している事例が複数見られました。また、地権者・事業者・居住者等の関係者が問題意識を共有した上で、有事を見据え平時から連携を図り、防災以外の観点も含めた総合的な地域価値の向上に努めている事例も見られました。災害リスクを踏まえた土地利用を実現する上では、人口減少の観点も重要です。例えば、前章にて述べたように、今後人口が減少する地方都市においては、コンパクトシティ化を進める中で相対的に災害リスクの高い場所にはできるだけ人が住まないようにするなど、都市のコンパクト化と防災・減災の両立が期待されます。

土地白書本文の公開について

今回は、土地に関する動向について概要を紹介いたしましたが、土地白書本文においては各種統計データを用いたより詳細な分析と、政府における土地に関する基本的施策を記載しております。土地に関する動向や施策についてご理解を深める際のご参考としていただければと思います。

 国土交通省土地総合情報ライブラリー「平成27年版土地白書」
(書店等を通じてお買い求めいただくことも可能です。)

※執筆の内容は、2015年8月末時点によるものです。

国土交通省


詳しくは、国土交通省土地総合情報ライブラリー「平成27年版土地白書」を参照

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