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「改正土砂災害防止法」について土砂災害防止法の改正内容や不動産取引での
取り扱いについて紹介

2015年2月10日

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国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 

住宅の購入等を検討する際、住宅の広さや駅からの距離、通勤・通学時間、スーパーやコンビニエンスストア等の利便施設が近所にあるか等、様々な情報を得ながら物件を絞り込むことになりますが、自らの身体・生命を守るという観点から、防災関連情報も積極的に収集・活用することは重要です。このような防災関連情報の1つに、土砂災害に関する情報があります。

平成26年11月に「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(平成12年法律第57号。以下、「土砂災害防止法」)が改正されました。これを受けて今回は、その概要と不動産取引における取り扱いについてご紹介します。

土砂災害防止法とは

土砂災害防止法とは、土砂災害から国民の生命を守るため、土砂災害のおそれのある区域について、危険の周知、警戒避難体制の整備、住宅等の新規立地の抑制、既存住宅の移転促進等のソフト対策を推進しようとするものです。

土砂災害防止法では、土砂災害のおそれがある区域について、以下のとおり規定されています。

1、
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)…急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、住民等の生命又は身体に危害が生じるおそれがあると認められる区域で、危険の周知、警戒避難体制の整備(※1)が行われます。
2、
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)…建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生じるおそれがあると認められる区域で、上記に加え、特定の開発行為に対する許可制(※2)、建築物の構造規制(※3)、建築物の移転等の勧告(※4)が行われます。
※1
各市町村において設置する「市町村防災会議」等において、市町村地域防災計画に、警戒避難体制に関する事項を定めることとされています。
※2
住宅宅地分譲や社会福祉施設、学校、医療施設等の建築行為は、都道府県の許可が必要となります。
※3
居室を有する建築物は、建築基準法施行令に定められた、作用すると想定される衝撃等に対して建築物の構造が安全であるかどうか、都道府県または市町村による建築確認がされます。
※4
著しい損壊が生じるおそれのある建築物の所有者に対して、都道府県より移転等の勧告がなされます。移転等については、住宅金融支援機構の融資等の支援を受けられます。

なお、宅地建物取引業者は、取引の対象となる不動産が土砂災害警戒区域、特別警戒区域内にある場合には、宅地建物取引主任者が行う重要事項説明において、当該不動産が土砂災害警戒区域等の区域内にある旨等を説明する必要があります。

(参考)土砂災害のおそれのある区域は以下の手順で指定されます。
 土砂災害防止対策基本指針の作成(国土交通省):土砂災害防止対策の基本的事項、基礎調査の実施指針、土砂災害警戒区域等の指定指針等を作成
 基礎調査の実施(都道府県):区域指定及び土砂災害防止対策に必要な調査(地形、地質、土地利用状況等)を実施
 土砂災害のおそれのある区域(土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域)の指定(都道府県)
改正の背景

平成26年8月豪雨により広島県広島市北部で発生した土砂災害等において、土砂災害警戒区域等の指定だけでなく基礎調査すら完了していない地域が多く存在し、住民に土砂災害の危険性が十分に伝わっていないこと、土砂災害警戒情報(※5)が、直接的な避難勧告等の基準にほとんどなっていないこと、避難場所や避難経路が危険な区域内に存在するなど、土砂災害からの避難体制が不十分な場合があることが認識され、これらに対して必要な対策を講じるべく、今般、土砂災害防止法の改正に至りました。

※5
土砂災害警戒情報とは、降雨による土砂災害の危険が高まったときに都道府県と気象台が共同で発表している防災情報です。今回の法改正により、市町村長が避難勧告等を発令する際の参考となる情報であると明確に位置づけられました。
改正の概要

平成26年11月の法改正で新たに規定された、地方公共団体がその住民に対して行う防災対策等は主に以下の3点です。

(1)土砂災害の危険性のある区域の明示(基礎調査結果の公表)
住民に土砂災害の危険性を認識してもらうとともに、土砂災害警戒区域等の指定を促進させるため、都道府県に対して基礎調査の結果について公表することが新たに義務づけられます。
基礎調査の結果の公表については、都道府県等のホームページや出先機関、市役所等での閲覧、掲示板、回覧板、各戸配付などで周知することとされています。

(2)円滑な避難勧告等の発令に資する情報提供
避難勧告等の発令に資するため、土砂災害警戒情報について、新たに法律上に明記するとともに、都道府県知事に対し、一般に対する周知等の義務が課されています。

(3)避難体制の充実・強化
市町村地域防災計画において、土砂災害警戒区域について、避難場所、避難経路等に関する事項、避難訓練の実施に関する事項、社会福祉施設、学校、医療施設等に対する情報伝達等について定め、避難体制の充実・強化を図ることとされています。

不動産取引における取り扱い

今回の法改正によって、都道府県が実施する基礎調査の結果について公表が義務づけられることに伴い、宅地建物取引業者は、基礎調査の結果が公表されている場合にはその結果についても、取引判断に重要な影響を及ぼす事項として、購入者等に対して行う重要事項説明において説明することが望ましいとしています。
具体的には、取引の対象となる不動産が、基礎調査により土砂災害のおそれがあると認められた区域内(土砂災害警戒区域等に相当する範囲)にある場合にはその旨と、当該範囲が土砂災害警戒区域等に指定される可能性があることを説明することが望ましいとしています。

以上、改正土砂災害防止法について、その概要と不動産取引における取り扱いについてご説明しました。不動産は個別性が強くひとつとして同じものはありませんので、しっかり情報を収集し、納得して取引を行うことが重要です。

※執筆の内容は、2015年1月末時点によるものです。

国土交通省

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