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不動産流通市場活性化に向けた不動産業課の取り組みについて・中古住宅の流通市場活性化に向けた不動産業課の主な取り組みを紹介

2013年3月13日

Report
国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 

近年、日本の中古住宅をめぐる価値観は大きく変化しています。人口減少・少子高齢化が進み、住宅の主な一次取得者層である30歳代の平均年収や金融資産が減少している一方で、昭和56年以降の新耐震基準を満たした住宅や長期優良住宅に代表されるような、性能面でも優れた住宅のストックが着実に増加しています。これらの影響もあり、これまでのように新築にこだわらず住宅の本質的価値を見極めた上で、自身の生活スタイル・ニーズに合った住宅を購入しようとする消費者が増加していると言われています。国土交通省でも、これまでの新築重視の住宅政策から転換し、既存の住宅ストックを有効活用していくことを、重要な政策課題と位置づけております。

このような環境の下、国土交通省では、平成23年11月に「不動産流通市場活性化フォーラム」を設置し、不動産流通市場の活性化に向けた具体的な方策について、昨年6月に提言をとりまとめました。また続く「不動産流通市場における情報整備のあり方研究会」では、不動産に係る情報整備に当たって特に重要と思われる検討課題について議論を行い、今後の方向性をとりまとめました。
※関連情報についてはVOL.36VOL.45VOL.47を参照

現在、国土交通省において不動産流通業を所管する不動産業課では、これらの議論の結果を踏まえ、不動産流通市場の活性化に向けて特に以下の3点について重点的に取り組んでおります。

  • ・事業者間連携による新たなビジネスモデルの促進
  • ・消費者にとって必要な情報の整備・提供の充実に関する調査・検討
  • ・新たな建物評価手法の確立に向けた調査・検討
事業者間連携による新たなビジネスモデルの促進

中古住宅の流通市場を活性化する上では、実際の住宅取引の場で消費者と直に接する宅地建物取引業者(以下「宅建業者」)が重要な役割を持ちます。しかし、宅建業者は、不動産取引に関する契約や法律などの専門的知識や経験を有しているものの、建築施工技術等については必ずしも十分な知見を有しているとは限りません。そこで、宅建業者がリフォームやリノベーション、インスペクション(建物検査・診断)等に従事する他の事業者と連携・協力し、不足している専門性やノウハウを補完、向上させることで、消費者が安心して中古住宅の取引を行うことのできる流通市場を整備していく必要があります。
不動産業課では、平成24年度に予算措置を講じ、先進的な不動産流通ビジネスモデルの育成・支援と成功事例の普及を目的として、宅建業者を中心とする関連事業者の連携による新たなビジネスモデルの検討や普及活動に対して、支援を実施しています。具体的には、都道府県または地域ブロックごとに、宅建業者やリフォーム業者、インスペクション業者、瑕疵保険法人、不動産鑑定士、金融機関などの団体や個別の企業が連携して、消費者にワンストップで各種サービスを提供し、中古住宅の購入を検討する消費者の安心感や満足感を高められるような新たなビジネスモデルを検討する協議会等の活動をサポートしています。本事業を通じて既に全国12の地域で連携協議会が立ち上がっており、中古住宅流通活性化のための具体的な取り組みが始まっています。
また昨年11月より、不動産市場の現状の認識共有と流通市場の拡大に向けた気運の醸成を目的として、国土交通省主催で民間有識者、事業者を講師に招き、「不動産流通市場活性化のための講習会」を全国10ヶ所で順次開催しています。さらに本年3月19日には、12の地域連携協議会が行ってきた今年度の事業成果報告を行うシンポジウムを開催する予定で、各地域における先進的な取り組みを全国の事業者や消費者で共有し、不動産市場の整備・活性化に向けた取り組みのさらなる広がりを促進していきます。シンポジウムの詳細は国土交通省のサイトをご参照ください。

事業者間連携のイメージ

消費者にとって必要な情報の整備・提供の充実に関する調査・検討

消費者が中古住宅の購入を決定するに当たっては、不動産に関わる情報の収集と分析が重要になります。中古住宅の購入を検討している消費者は、不動産情報ポータルサイト上での情報収集に加え、取引の仲介を行う宅建業者等から提供される各種情報、宅建業法に基づく重要事項の説明等により、取引の判断に必要な情報を収集しています。しかし、現状のポータルサイト等では、物件の外観や間取り、設備等の基礎的な情報については多くの情報を閲覧することができるものの、物件の過去の使用状況、建物のリフォーム等の修繕履歴や劣化状況(床下、外壁、基礎、屋根裏、水回り等の現況)、及び成約価格等の情報については、消費者が判断を下すために十分な情報が開示されているとは言い難い状況です。
また、近年の消費者保護に関する意識や、建物の質や地盤の状況に関する意識の高まり等を背景に、宅建業者が不動産仲介に当たり収集すべき情報が膨大になってきており、その収集にかかる時間的、物理的コストが円滑な不動産流通の妨げとなっているとの指摘があります。
こうした状況を踏まえ、前述の「不動産流通市場における情報整備のあり方研究会」において、中古住宅取引に必要とされる各種情報を一元的に集約・管理するシステムを構築し、それらの情報が宅建業者を通じて消費者の皆様へ適時的確に提供される仕組みを整備することで、不動産流通市場の円滑化ならびに活性化を図る必要性が確認されました。
不動産業課では平成25年度に予算措置を講じて、取引に当たって収集・提供が必要となる情報項目を具体的に整理し、分散している各種情報の一元的な集約の可能性と方法等についての検討を具体的に進め、取引に必要な情報を消費者が入手しやすくなる環境整備を進めていく予定です。

新たな建物評価手法の確立に向けた調査・検討

不動産の取引価格が妥当かどうかを判断できることは、中古住宅を取引する上で重要な要素となります。しかし、現在一般的に行われているような、宅建業者等のアドバイスに基づいて売り主・買い主間で決められている取引価格についてみると、築後20~25年程度で一戸建て住宅の建物価値がゼロ評価に近くなるような、築年数のみを基準とする建物評価が一般的であることから、必ずしも建物のメンテナンスの状態や個別の使用価値を考慮した適正な建物評価が行われているとは言い難い状況にあります。
加えて、リフォームやリノベーションを行った場合には建物の使用価値が増加するはずですが、その点に関し客観的な指標がないことから、取引価格や金融機関の担保価値においてリフォーム部分等が適正に反映されていないと言われています。こうしたことが、納得感のある中古住宅取引や住宅の所有者等による積極的なリフォーム実施の阻害要因になっていると考えられます。
そのため、宅建業者等による現行の住宅価格の査定方法や、金融機関による建物の担保評価等、中古住宅の取引関係者が用いている建物評価基準の実態について調査を行った上で、現行の価格査定等における課題等を抽出・分析し、建物の物理的な使用価値と実際の取引における市場価値のそれぞれについて、リフォームやリノベーションによる影響を含めた定量的な調査・分析を行うことが必要だと考えられます。
不動産業課では平成25年度に予算措置を講じて、これらに関する調査を実施する予定で、最終的にはその結果等も踏まえ、中古住宅の取引関係者等が統一的に参照可能な建物評価基準を構築することで、住宅の所有者等が積極的にリフォームを行い、納得できる価格で中古住宅を取引できるような環境整備を進めていく予定です。

以上3事業に関する平成25年度予算案については、すでに閣議決定を受けており、国会承認後の速やかな予算執行に向けて国土交通省では準備を進めております。
建物に対するリフォームやメンテナンスが適切に評価されるような建物評価基準を作ることは、所有者による積極的な住宅の手入れにもつながります。また住宅が取引される際に修繕履歴等を含めた豊富な物件情報が円滑に蓄積・開示されることで、買い主は今まで以上に安心して中古住宅の購入を判断できるようになります。そのような住環境作りを通じて、一つの住宅が流通しながら長く大切に使われる社会が形成されることを目指し、国土交通省では引き続き関係機関と連携を図りながら、不動産流通市場活性化のための政策展開を進めてまいります。

※執筆の内容は、2013年2月末時点によるものです。

国土交通省


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