トップ>国土交通省・最新の動き>VOL.43 中古住宅・リフォームトータルプランについて
2012年6月13日
近年、自宅をリフォームする方や、中古住宅を購入してリフォームやリノベーションをする方が増えています。しかし、リフォームや中古住宅が注目されるようになってきたのは最近のことで、まだまだ中古住宅流通市場・リフォーム市場には、整備しないといけない課題や、市場が活性化する余地があります。国においても、国土交通省を中心に、リフォーム市場や中古住宅流通市場の活性化・拡大を図ろうとしており、そのために「中古住宅・リフォームトータルプラン検討会」や、当「国土交通省最新の動き」VOL.36でも紹介した「不動産流通市場活性化フォーラム」などで具体的に何をすべきかについての検討を進めてきました。今回は、本年3月に取りまとめられた「中古住宅・リフォームトータルプラン」について、その背景等を含めてご紹介します。
なぜ今中古住宅のリフォームや流通市場の活性化が重要であるかを、いくつかのキーワードから説明します。
(1)政府の方針
これからの経済成長を支える分野に力を入れていこうという目的で策定された計画が「新成長戦略」です(平成22年6月18日閣議決定)。ここでは「1,000兆円の住宅・土地等実物資産の有効活用を図る必要がある」という点と、そのために「中古・リフォーム市場整備のためのトータルプランを策定」し、「中古流通市場・リフォーム市場を20兆円まで倍増」させようとする点がポイントになっています。日本は人口減少・高齢化社会の中で新築住宅着工が落ち込み、なかなか戸数増は期待できません。したがって、今後の住宅投資の拡大は中古住宅やリフォームにかかっています。すなわち、中古住宅・リフォーム市場の拡大なくして、住宅投資の拡大はないとも言えます。
(2)世代別の人口動態
グラフ1は世代別の人口動態です。人口を0~19歳(未成年者)、20~64歳(勤労者世代)、65~74歳(高齢者になったばかりの世代)、75歳以上(高齢者)に人口割合を分類したもので、少子高齢化の日本社会を象徴するグラフとしてよく使用されるものです。
64歳以下の人口割合が急激に減り、総人口自体も減っていくことがグラフ1から理解できます。国としても人口減少を少しでも食い止めるべく様々な施策を講じているところですが、このような人口減少や少子高齢化が続く場合には新築住宅が多くなることは考えにくく、今後新築住宅の着工増が期待できないと言われている最大の根拠がこのグラフと言えます。
(3)勤労者世帯の収入・貯蓄動向
グラフ2は勤労者世帯の30歳代と40歳代の年収と貯蓄金額についてのグラフです。30歳代も40歳代も世帯主の年収は、平成14年から減少傾向にあることが分かります。他の世代も含めた全勤労者世帯の年収は、最近10年間で約70万円減少しています。
またグラフ3からは、特に30歳代の貯蓄が、平成14年から100万円近く減少していることが分かります。これまでのマイホームの最大の需要層である30歳代の家計がこのような状況では、マイホームを購入することは難しい状況であると言えます。
(4)既存住宅流通の現状
日本における中古住宅の流通数(既存住宅流通量)は年間約17万戸で、住宅市場全体に占めるシェアは約13%と言われています。一方、アメリカ、イギリス、フランス等の国は中古住宅が全住宅流通量の7割から9割程度を占めていると言われており、欧米諸国では、中古住宅を購入・リフォームをして居住することが一般的とも言われています。
(5)現状を踏まえた住宅政策の課題
上述したように、現在の日本では、人口減少や少子高齢化の影響で今後新築住宅の着工増が期待できず、マイホームの購入層である勤労世帯の年収や貯蓄は減少しています。また、日本は欧米諸国と比べると中古住宅流通・リフォーム市場はまだまだ小さいと言えます。しかし、最近では首都圏の中古マンションの取引量が新築マンションを上回るなど、中古住宅の流通は次第に拡大しつつあり、また、リフォームにより中古住宅の魅力を高める取り組みも広がりつつあります。国としてはこの機会をとらえ、中古住宅を安心して取得・リフォームができる市場の環境整備を進めることで、国民の住宅の選択肢の幅を広げ、国民一人一人が無理の無い負担で、ライフステージやライフスタイルに応じた住宅を確保できるようにすることを、現下の住宅政策の重要な課題であると考えています。
「中古住宅・リフォームトータルプラン」は、こうした観点から我が国の中古住宅流通・リフォーム市場の環境整備を進め、国民の住生活の向上を目指すとともに、市場規模の拡大を通じた経済の活性化に資するため、今後講ずべき施策を総合的・体系的に取りまとめるものであり、このプランに基づき積極的な施策の展開を図るものです。
●中古住宅・リフォームトータルプランの意義
本トータルプランに基づき、中古住宅流通・リフォーム市場を整備することの意義としては、主に以下の5点が挙げられます。
●中古住宅・リフォームトータルプランの取り組み
中古住宅流通・リフォーム市場の整備に向け、本トータルプランでは、以下の5つの施策の柱に沿って、取り組みを総合的に推進するものとします。また、施策の効果に対する評価を踏まえ、必要に応じて見直しを加えながら取り組むものとします。
今後国土交通省では、中古住宅・リフォームトータルプランや、今後取りまとめる予定の不動産流通市場活性化フォーラムにおける提言に基づき、国民の皆様が自身のライフスタイルに合った住宅を、安心して無理なく取得できる環境の整備を進めていきます。
※執筆の内容は、2012年5月末時点によるものです。