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「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)の公表について・原状回復をめぐるトラブルの未然防止のためにガイドラインを再改訂

2011年9月14日

Report
国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 

民間賃貸住宅の退去時における原状回復をめぐるトラブルの未然防止のため、賃貸人・賃借人があらかじめ理解しておくべき一般的なルールを示した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について、さらなる普及促進等を図るために、平成23年8月に同ガイドラインの再改訂を行いました。今回は再改訂後のガイドラインの概要についてお知らせします。

ガイドラインの目的

原状回復の問題は、賃貸借契約の「出口」すなわち退去時の問題と捉えられがちですが、これを「入口」すなわち入居時の問題と捉え、入退去時の物件の確認等のあり方や、契約締結時の契約条件の開示を具体的に示すこととして、こうした対応策を的確に採り入れ、賃貸人が賃借人に対して原状回復に関する内容の説明を十分に行うとともに、賃貸人と賃借人の双方で原状回復に対する正しい認識を共有することが、トラブルを未然に防止するためには効果的であると考えます。
すなわちこのガイドラインは、賃貸借契約締結時において参考にしていただくものです。

なお、現在、既に賃貸借契約を締結されている方は、一応、現在の契約書が有効なものと考えられますので、契約内容に沿った取り扱いが原則ですが、契約書の条文があいまいな場合や、契約締結時に何らかの問題があるような場合は、このガイドラインを参考にしながら話し合いをして下さい。

ガイドラインのポイント

(1)原状回復とは
原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。
⇒ 原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化

(2)「通常の使用」とは
「通常の使用」の一般的定義は困難であるため、具体的な事例を次のように区分して、賃貸人と賃借人の負担の考え方を明確にしました。

(参考図)

(参考図)


A:賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても、発生すると考えられるもの
B:賃借人の住まい方、使い方次第で発生したり、しなかったりすると考えられるもの(明らかに通常の使用等による結果とは言えないもの)
A(+B):基本的にはAであるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗等が発生または拡大したと考えられるもの
A(+G):基本的にはAであるが、建物価値を増大させる要素が含まれているもの
⇒ このうち、B及びA(+B)については賃借人に原状回復義務があるとしました。

(3)経過年数の考慮
前記BやA(+B)の場合であっても、経年変化や通常損耗については、賃借人はその分を賃料として支払っていますので、賃借人が修繕費用の全てを負担することとなると、契約当事者間の費用配分の合理性を欠くなどの問題があります。賃借人の負担については、建物や設備の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減少させるのが適当です。

(4)施工単位
原状回復は毀損部分の復旧ですから、可能な限り毀損部分に限定し、その補修工事は出来るだけ最低限度の施工単位とすることを基本としていますが、毀損部分と補修を要する部分とにギャップ(色あわせ、模様あわせなどが必要なとき)がある場合の取り扱いについて、一定の判断を示しています。

再改訂の概要

(1)原状回復にかかるトラブルの未然防止

  1. 賃貸住宅標準契約書との連動を意識した原状回復条件様式の追加
    契約時に、原状回復条件を契約書に添付することにより、賃貸人・賃借人の双方が原状回復に関する条件を合意できるよう、「契約書に添付する原状回復の条件に関する様式」を追加しました。(「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)の別表3参照)
  2. 原状回復費用精算書様式を追加
    契約段階(入口)における賃貸人・賃借人の合意が重要であるのと同様、費用精算(出口)の段階の透明化も重要ですので、費用請求の際の精算明細書の雛形を示し、各対象箇所の破損の状態を確認し、原状回復の精算を具体的に実施するようにしました。(「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)の別表4参照)
  3. 特約について
    賃貸借契約において特約を設ける場合の要件について、最高裁判例やQ&Aを追加し、特約の有効性・無効性に関する考え方の明確化を図りました。

(2)税制改正による残存価値割合(10%→1円)の変更
ガイドラインにおいて、経過年数による減価割合については、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」を参考にするとしており、償却期間経過後の賃借人の負担が10%となるよう賃借人の負担を決定してきましたが、平成19年の税制改正によって残存価値が廃止され、耐用年数経過時に残存簿価が1円まで償却できるようになりました。このため、ガイドラインにおける経過年数の考慮も、税制改正に従った形で改訂しました。

(3)Q&A、裁判事例の追加

  1. Q&Aの追加
    ガイドラインの運用等においてこれまでによくある質問として、具体的な事項のQ&Aを追加しました。(「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)のp.37~45のQ&A参照)
  2. 裁判事例の追加
    前回のガイドライン改訂後に出された主な判例21事例を追加しました。これにより、掲載裁判例数は42事例となりました。(「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)のp.49~115の原状回復にかかる判例の動向参照)

※執筆の内容は、2011年8月末時点によるものです。

国土交通省


「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)(平成23年8月)の本文は、こちらから


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