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金融ADR制度と不動産関連投資商品について・不動産関連投資商品を扱う宅建業者は苦情処理措置及び紛争解決措置を講じる必要あり

2010年11月10日

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国土交通省 総合政策局 不動産業課
 

金融商品取引法の改正により、金融ADR制度が新たに設けられることになりました。不動産関連投資商品の対応について、ご執筆をお願いしました。

平成22年4月1日に「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が施行され、金融分野において裁判外紛争解決制度(ADR制度)が創設されました。
施行に伴って不動産関連投資商品(不動産の信託受益権、当該信託受益権に投資する事業を営むことを約する組合契約等の権利)を扱う宅地建物取引業者(以下「宅建業者」)にも平成22年10月1日から一定の行為規制が適用されます。

金融ADR制度とは?

ADR制度とは、様々なトラブルについて、裁判を起こすのではなく、第三者に関わってもらいながら解決を図る紛争解決方法のことです。
金融分野におけるADR制度の中核は、業ごとの任意の苦情処理と紛争解決を対象とする機関が、一定の要件を具備すると内閣総理大臣から指定を受ける「指定紛争解決機関制度」です。
ただし、該当する指定紛争解決機関が存在しない場合は、指定紛争解決機関との手続基本契約に代わって、登録を受けた業務の種別ごとに苦情処理措置及び紛争解決措置を講じる必要があります。

行為規制

不動産関連投資商品を扱う宅建業者の場合は、現時点で宅建業の指定紛争解決機関は存在しないので、平成22年10月1日から苦情処理措置及び紛争解決措置を講じる必要があります。
措置内容は業務方法書の記載事項とされているため、業務方法書の変更届出を行う必要があります。同様に、施行日以後に終了する事業年度に係る事業報告書及び説明書類にも苦情処理措置及び紛争解決措置を記載する必要があります。
また、契約締結前交付書面の記載事項にも苦情処理措置及び紛争解決措置が追加されましたが、こちらは1年間の経過措置が認められているので平成23年4月1日までは従前の例によることができます。

苦情処理措置

自社で苦情処理体制を整備する場合の措置としては、苦情処理の業務に従事する従業員への助言・指導を一定の経験を有する消費生活専門相談員等に行わせること、自社で業務運営体制等を整備・公表することが、法令で規定されています。
自社で業務運営体制等を整備・公表する場合には、苦情の発生状況に応じた業務運営体制・社内規則を整備、苦情申出先の周知、業務運営体制・社内規則(連絡先・業務フロー等の部分)の公表といった措置を講じなければなりません。周知・公表は、例えば、HP・店頭ポスター・パンフレット等がありますが、HPを閲覧できない顧客へ配慮する必要があります。
外部機関を利用する場合の措置としては、金融商品取引業協会・認定投資者保護団体の利用や、国民生活センター・消費生活センターの利用等が定められています。

紛争解決措置

紛争解決措置には、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」に定める認証ADR手続き、金融商品取引業協会・認定投資者保護団体、弁護士会、国民生活センター・消費生活センター等の外部機関の利用が法令で規定されています。
外部機関を利用する場合、必ずしも当該外部機関との間において業務委託契約等の締結までは求められていませんが、標準的な手続きのフローや、費用負担に関する事項等についてあらかじめ取り決めを行っておくこと、また、顧客保護の観点から、外部機関の名称及び連絡先等、外部機関に関する情報について顧客へ周知・公表しておくことが望ましいといえます。

金融ADR制度の導入により、中立性・公正性のある紛争解決機関による事案の性質や当事者の事情に応じた迅速・簡便・柔軟な紛争解決が可能になり、法的枠組みの下、利用者の納得感のあるトラブル解決、金融商品・サービスへの利用者の信頼性の向上が期待されます。


金融ADR制度のイメージ



※執筆の内容は、2010年10月末時点によるものです。


国土交通省


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