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賃貸不動産管理業の適正化のための制度について(2)・賃借人や賃貸人の利益を保護するために、賃貸住宅管理業の登録制度を創設することを検討

2010年3月15日

Report
国土交通省 総合政策局 不動産業課
 

vol.15に引き続き、平成22年2月に社会資本整備審議会不動産部会において取りまとめられた「賃貸不動産管理業の適正化のための整理について(これまでの議論を踏まえた整理)」の内容について紹介します。

登録制度の位置づけ及びその効果

登録制度の位置づけについては、1. 法律により義務づけられた登録制度、2. 告示などによる任意の登録制度、3. 事業者団体等による自主的な登録制度などがあります。

  1. 法律により義務づけられた登録制度
    法律により無登録営業を禁止し罰則を課すことで、強制力、執行力を担保する制度です。ルールを守らない行為を禁止できる一方で、営業の自由に制約を加える制度であるため、規制強化に対する懸念も存在します。また、無登録営業を禁止する法執行のためには、地方自治体を含めた行政側の執行体制の構築が必要となります。

  2. 告示などによる任意の登録制度
    法律により無登録営業を禁止するものではなく、広く登録されている情報(告示に定める規定を遵守している状況など)を公表する登録制度であることから、強制力、執行力は劣ります。しかし、任意の制度であるため、1. の制度と比べて柔軟な制度運用が可能です。
    また、法律に基づく制度構築に向け、試行的な制度と位置づけ、規制内容を精査することも可能です。
    さらに、すべての事業者を対象としない登録制度であるため、登録事業者数が抑制されることから、1. の制度と同等の執行体制を設けない制度構築も可能です。

    ○告示による登録制度の具体的な効果
    • 登録事業者は、業務に関するルールを遵守することが求められ、遵守されない場合は登録から消除されます。
    • 登録事業者名は公表されることから、消費者は、登録事業者の情報を事業者選択(物件選択)の判断材料として活用できます。
    • 消費者による優良な事業者(良質な管理物件)の選別が進むことで、適正な業務のためのルールが賃貸住宅市場において広く普及することが期待されます。
    • 制度創設により、「賃貸住宅管理業」に対する社会の認識が高まるとともに、賃貸住宅管理業の健全な発展が期待されます。

  3. 事業者団体等による自主的な登録制度
    公的関与のない自主的な取り組みであり、行政による規制強化とはならない制度ですが、行政の強制力、執行力による担保が全く期待できない点で、賃貸住宅管理業の改善を図る上では不十分と考えられます。
管理業務適正化に向けた制度構築の課題と当面の方針

法律により無登録営業を禁止する登録制度の構築に当たっては、以下の点を踏まえた対応が必要です。

  • 法の適正な執行と想定される賃貸住宅管理業者の事業者数を勘案すると、宅地建物取引業法と同様の執行体制を確保するため国土交通大臣及び都道府県知事による登録制度とすることが不可欠であり、当該事務を実施することとなる地方自治体の理解と協力を得ることが必要となります。
  • 賃貸住宅管理を実施している事業者団体からは、法律による制度構築を要望する意見があるものの、新たに無登録営業が禁止されるサブリース業など、これまで規制を受けていない事業分野に対する十分な対応が必要となります。

このため、当面は、告示による任意の登録制度を国土交通省が実施し、国民の意見、事業者団体における取り組み状況などを踏まえ、法制度の導入に向けた検討を継続します。
任意の登録制度を当面は国により実施するとしても、地方自治体や事業者団体との連携のもと登録制度が十分に機能し、実効あるものとするよう、普及を促進することが必要です。登録制度については広く透明性を高めるとともに、賃借人及び賃貸人に対する制度の周知普及や事業者に関する情報をわかりやすく開示する仕組みの構築も重要です。
また、賃貸住宅管理に関する登録制度の実施に当たっては、登録対象となる事業の明確化を図るとともに、パブリックコメント(意見公募)を実施するなど、広く国民の意見を求めることが必要です。
さらに、法制度の導入の検討に当たっては、登録事業者の捕捉率など告示による登録制度の運用状況、事業者団体における業務適正化の取り組み状況及びそれらの効果などを踏まえ対応することが必要です。
なお、賃貸人、賃借人の権利保護や義務履行が一方的にならないよう、住宅確保要配慮者に対する施策の充実や、今後明らかとなる賃貸借契約をめぐる判例等を踏まえたルール(業務処理準則)の更なる改善などにも留意します。

悪質な追い出し行為への対応を含めた賃貸住宅にかかわるトラブルへの対応

以下の取り組みとの連携を図りながら、賃貸住宅管理業の登録制度を創設することにより、民間賃貸住宅にかかわるトラブルの抑制及び良質な賃貸住宅市場の形成を推進します。

(1)法律による悪質な行為に対する規制

昨年来、特に社会問題化している「追い出し行為」については、別途、住宅宅地分科会民間賃貸住宅部会において、これらの行為に対する法規制の必要性が指摘されており、賃貸住宅管理業者について、賃貸住宅の家賃等の悪質な取り立て行為の禁止等を行うことが必要です。

(2)標準契約書・ガイドライン等による自主的ルールの促進

賃貸人と賃借人との間の賃貸借契約に基づくトラブルへの対応としての原状回復ガイドラインなどの見直しの必要性についても、同部会において指摘されていますが、賃貸住宅管理業に関しても、標準管理委託契約書の改善及び普及を図るとともに、登録制度に基づくルール以外の事業者による自主的ルールの活用も必要です。
また、事業者においては、これらの自主的なルールなどの遵守に加え、事業者自身における法令遵守体制の充実・強化が望まれます。

(3)苦情相談体制等の充実

賃貸住宅については、不動産に関するトラブルの中でもその件数が多い分野です。このため、事業者団体などの自主的な取り組みにより、苦情相談を受け付ける体制を一層充実させ、トラブルの迅速な解決を図るとともに、紛争に至った場合でも、少額訴訟の普及・活用や裁判によらない迅速・簡易な紛争解決の手段の整備について、引き続き検討する必要があります。また、こうした体制に対して寄せられた情報を集約し活用していくことが重要です。

(4)消費者教育など賃貸住宅に関する知識の普及啓発

賃貸住宅に関係する法律や取引に関する商慣習などは多岐にわたり、賃借人のみならず多くの個人の賃貸人も必ずしも十分な知識を有していない状況にあり、賃貸住宅経営を斡旋する事業者からの説明が十分されていないことも見受けられ、このことが賃貸住宅にかかわるトラブルが多発する一要因となっていると考えられます。
このため、登録制度の導入による事業者に対するルールの普及のみならず、賃借人及び賃貸人に対する賃貸住宅に関する知識やノウハウの普及啓発について継続的に取り組む必要があります。


図:賃貸住宅管理業の適正化のための制度

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※執筆の内容は、2010年2月時点によるものです。

国土交通省


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