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不動産取引からの反社会的勢力の排除のあり方について・不動産取引からの反社会的勢力の排除のために業界一丸となった取り組みを推進

2009年11月2日

Interview
国土交通省 総合政策局 不動産業課 不動産業指導室
取材:住宅ジャーナリスト 山本久美子氏

平成21年3月に、「不動産取引からの反社会的勢力の排除のあり方検討委員会」(平成21年1月設置)において、検討状況についてのとりまとめが行われました。今回はご担当者に、反社会的勢力の排除が必要となっている背景や今後の課題などについてお聞きしました。

消費者のリスク軽減のためにも、反社会的勢力の排除が必要

――不動産取引からの反社会的勢力の排除について検討を進めることとなった理由など、取り組みの背景についてお教えください。

現在、暴力団などの反社会的勢力は、暴力団対策法などによる警察の取り締まりを逃れるために、社会変化に対応しながら組織実態を隠ぺいする動きを強めています。また、一般企業を装って、不動産取引をはじめとする経済活動や企業活動を通じて資金を獲得するといった動きが、顕著になっています。
政府は、平成19年6月に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」をとりまとめました。現在は、この指針を受けて、銀行業界・証券業界などにおいて積極的な取り組みが進められているところです。
不動産業界においても、平成19年12月に、不動産取引に関係する業界団体が、業界横断的な組織として「不動産業における犯罪収益移転防止及び反社会的勢力による被害防止のための連絡協議会」を設立して、犯罪収益の移転防止とともに反社会的勢力の排除についてのいろいろな検討が進められています。

――不動産取引に反社会的勢力が関与することによって、消費者にはどんなリスクが生じるのでしょうか?

事業者や業界にとってのリスクもありますが、もちろん、消費者にとってのリスクもあります。
最近でも、不動産取引に反社会的勢力が関与するといった報道がありました。反社会的勢力が活動拠点として不動産を取得した場合、その近隣住民にとっての脅威、生命・身体へ危険を及ぼすことも考えられます。さらには、環境的な瑕疵(かし)ということで、近隣住民が所有している不動産自体の資産価値が下落してしまう可能性があります。

反社会的勢力は、暴力団に限りません。暴力団の維持や運営に協力するなどの関係者はもちろん、社会活動・政治活動を仮装などして暴力的な要求行為を行ったり、市民生活に脅威を与える者も含まれます。そうした反社会的勢力が、テナントや所有者として不動産を取得することなどを排除し、消費者や事業者のリスクを軽減しようというものです。

事業者・業界団体・行政が一体となって取り組むことが求められる

――現時点では不動産取引からの反社会的勢力の排除に対して、どういった取り組みが行われているのでしょうか?

現在でも、一部の地域や一部の事業者では、警察や暴力追放運動推進センターと連携をしつつ、従業者向けの講習などの取り組みが行われています。
しかし、最近でも、バブル期に社会問題化した暴力団とのつながりを背景とした事業者による悪質な地上げ行為や暴力団への資金提供といった事件が、報道で大きく取り上げられています。排除に向けた取り組みが一部の地域や事業者にとどまっているということで、まだ効果的なものになっていないというのが現状です。

――「不動産取引からの反社会的勢力の排除のあり方検討会」では、どういった観点で検討を進められたのでしょうか?

不動産業は、国民生活や経済活動の基盤を担っています。排除の取り組みを進めるには、事業者・業界団体・行政(国土交通省や警察など)という大きく3つの主体があり、これら主体が、自助・共助・公助という立場でそれぞれに求められる役割を果たして、関係者・業界が一体となって排除に向けて取り組んでいくことが必要になります。

そのためには、金融業界における先行的な取り組みが参考となりますが、まずは、不動産業の業界の構造や取引の特性などを整理しました。
具体的には、不動産取引では、対象となる財自体が高額、換金性が高いなどの特性があります。また、不動産業界は、個人や従業員数が少ない事業者が非常に多く、組織的な対応(取り組み)にあたっては人的・費用的な面での限界などもあります。これらによって、不動産取引が、反社会的勢力に狙われやすい状況に置かれているということについて再認識をしました。
検討会では、こうした特性などを踏まえつつ、今後の排除のあり方・取り組みの方向性について検討を進めてきました。

暴力団排除条項をはじめ、業界一丸となった取り組み

――反社会的勢力を排除するために、今後どういった施策が検討されていくのでしょうか?

検討会のとりまとめでは、反社会的勢力の排除のあり方として2つのポイントを示しています。1つ目は、反社会的勢力との一切の関係遮断に向けて、業界一丸となって取り組むということ。2つ目は、個人や従業員数が少ない事業者が多いという業界特性を受け、業界団体等による共助の必要性があること。これらのポイントを足掛かりとして、業界団体(連絡協議会)と連携をしながら検討を進めていきたいと思っています。
現在は連絡協議会において、暴力団等を排除する根拠となる暴力団排除条項の導入に向けた検討を始めたところで、国土交通省も参画しています。暴力団排除条項は、現状でも賃貸借契約において多くの事業者が活用していますが、売買契約においてはほとんど活用されていません。特に売買契約の解除については、法律的な論点なども含めて検討していくことになります。

――そのほかの今後の検討課題についてお教えください。

まずは、暴力団排除の意識を業界内で醸成・浸透させることです。排除に際しては、組織的な対応が必要となるわけですが、経営者から取引現場の担当者までの従事者全員において、排除についての意識付けが必要になります。現場の担当者には恐怖心が伴うものであり、例えば、担当者だけが意識を持っているだけでは十分でなく、担当者と経営者の双方に意識付けがされていれば、担当者は組織という後ろ盾があるということで、しっかりと対応ができるということにつながります。そのための啓発も行っていきたいと考えています。

また、不動産業界は、事業者も多く業界自体の規模も大きいうえ、賃貸借と売買、媒介や代理など様々な業態があります。不動産業を所管している国土交通省としては、業界全体の健全性の向上や、安心安全な取引の実現のためにも、事業者や業界団体などの取り組みへの支援や後押しを積極的に行っていきたいと思っています。

「不動産取引からの反社会的勢力の排除のあり方検討会とりまとめ」のポイント(抜粋)

※インタビューの内容は、2009年8月時点の取材によるものです。

もっと詳しく知りたい場合は、国土交通省の不動産取引からの反社会的勢力の排除のあり方検討会 -とりまとめ-をご覧ください。


国土交通省

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