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土地に関する不動産価格の推移-(1)地価公示に基づく価格

前回までは、首都圏と近畿圏を中心とした中古マンションと中古戸建住宅における取引件数や価格、建物面積、築年数等の動きについて取り上げました。今回は、不動産市場を把握する上で最も基本となる土地の価格動向について紹介したいと思います。

主要都市における土地価格の推移

土地価格の動きを捉えるデータとして、マスコミ等でも取り上げられることが多いのが地価公示です。これは、地価公示法に基づき国土交通省土地鑑定委員会が毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示(平成27年は全国23,380地点で実施)するもので、土地取引の指標や不動産鑑定、相続評価・固定資産税評価等の基準となっています。標準地とは、土地の用途が同質の地域でその利用状況や環境、地積、形状等が通常と認められる一団の土地のことです。

地価公示データに基づいて主要都市の住宅地価格の推移をみると、昭和から平成にかけたバブル期の高騰ぶりが改めてわかります(図表1)。東京23区の平均㎡単価は昭和63年に136.1万円でしたが、平成4年から急落し始め、平成16年には43.8万円と3分の1以下まで下落しました。その後のミニバブルで平成20年には57.9万円まで回復しましたが、同年9月のリーマンショックを機に再び下落。アベノミクスで金融緩和が始まった平成26年からは、住宅地価格は緩やかに上昇しつつあります。

図表1 主要都市における不動産価格の推移

図表1 住宅地の平均価格

図表1 商業地の最高価格

出典:国土交通省・地価公示関係データ

水準は異なるものの、その他の主要都市も概ね似た動きを示しています。ただ、直近10年間は東京23区ほどの変化はみられず低位安定が続いています。参考までに商業地(最高価格)の㎡単価と比較すると、東京とその他の都市の違いは明確になります。東京23区は平成9年を底に平成14年頃から上昇し始め、その後は他都市との地価水準が大きく開きました。平成20年にはバブル期を超える3,900万円に達し、直近の平成27年も3,380万円と過去の最高値に近づいています。

大阪市や名古屋市などの商業地も近年は上昇がみられますがその水準は低く、過去10数年の間に東京との経済格差が拡大した様子がうかがえます。バブル期には札幌市の後塵を拝していた福岡市も、平成11年頃から大阪市や名古屋市に近い動きを示すようになり、地域の中核都市として商業・業務機能の集積が進んだことがわかります。このように、地価(特に商業地価)は都市の経済力を表すものとして参考になります。

地域別の地価動向

また、都市圏や地域ごとに直近の地価の動きをみても、大都市圏とその他地域の回復の差が捉えられます(図表2)。平成27年の住宅地における前年比の変動率は三大都市圏でプラスに転じ、地方中枢都市では1%を超えています。一方、その他の市町村はマイナス1.3%と下落が続いています。商業地の上昇率はより高く、三大都市圏が1.8%、地方中枢都市は2.7%であるのに対し、その他の市町村はマイナス1.8%と上昇には至っていません。

図表2 圏域・地域別の対前年平均変動率

図表2 圏域・地域別の対前年平均変動率

東京圏の住宅地(前年変動率)

出典:国土交通省・地価公示関係データ

工業地は東京圏や地方中枢都市の変動率がプラスですが、その他の市町村や大阪圏・名古屋圏もマイナスであり、工場や物流倉庫など産業立地の動きが地価に反映されています。都心の商業地では地価の上昇が報道されていますが、身近な住宅地は大都市圏でも緩やかな上昇にとどまっており、住宅取得が困難になるほどの高騰は起きていません。

東京圏を例に住宅地の市区町村別変動率をみると、同じ都市圏内でもエリアによる差異がみられます。平成27年は千代田・中央・港・新宿・品川の各区や武蔵野市などが3.0%以上上昇しており、都心や人気の住宅地での上昇が目立ちます。東京23区内や多摩のJR中央線沿線、横浜市・川崎市、さいたま市など利便性が高く住環境が整ったエリアでも1.0~3.0%未満の上昇がみられます。これに対して、神奈川県や埼玉県、千葉県、茨城県の郊外エリアでは下落が続いており、人口や住宅供給の都心回帰に伴って地価の動きも二極化の様相を呈しています。

このように、エリアによって地価のトレンドには違いがあり、住まいの購入や売却のタイミングを計る上でも地価は最初に注目すべき基本情報と言えます。地価公示は、身近な近隣(調査地点)の地価を捉えるのに役立ちますが、公表は年1回(類似の都道府県地価調査と合わせても半年に1回)にとどまり速報性に欠けます。そこで次回は、四半期単位で詳細なエリアの地価動向が把握できる調査データについて紹介することにします。

標準地の設定数は、市街化区域18,269地点、市街化調整区域1,275地点、その他の都市計画区域3,816地点、都市計画区域外の公示区域20地点計23,380地点となっている。標準地の設定密度は、市街化区域では全国的に約0.8km/㎡当たり1地点、市街化調整区域では約30 km/㎡当たり1地点、その他の都市計画区域では、約13 km/㎡当たり1地点となっている。

 詳しくは「国土交通省・地価公示」を参照



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