トップ>相場・取引動向>データトピックス>既存住宅市場の現状-(2)中古マンション取引件数
前回は、わが国における既存住宅の市場規模について紹介しました。今回は、その中でも特に流通量を伸ばしている首都圏と近畿圏の中古マンション取引件数について取り上げます。
前回の「(1)その市場規模」で紹介したように、日本の既存住宅市場は着実に拡大しつつあります。中でも首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)と近畿圏(大阪・兵庫・京都・滋賀・奈良・和歌山)の流通量は、全国の6割以上を占めます。ここでは、特に活発な動きをみせる両都市圏について、中古マンション件数の推移をみることにしましょう。
東日本不動産流通機構※1が公表している首都圏の中古マンション成約件数をみると、平成26年度は33,265件で20年前の平成7年度(24,084件)に比べて38%増加しました(図表1)。新規登録件数は平成26年度が162,845件で、平成7年度(69,891件)に比べると2.3倍に拡大しています。ちなみに、成約件数とは上記の機構に報告された実際の取引件数で、新規登録件数は販売目的で機構に登録された売り出し物件の数です。
過去20年間を振り返ると、景気の変動や震災などの影響を少なからず受けてきたことがわかります。平成7年には阪神淡路大震災が発生し、戦後初の都市型災害として一部のマンションが被害を受け、首都圏でも成約件数、新規登録件数ともに減少しました。平成23年の東日本大震災では東京都心も大きな揺れを経験しましたが、マンション被害は比較的少なく流通市場に長期的な影響はありませんでした。
近年の動きでは、平成20年秋口のリーマンショックによる変動が特筆されます。新規登録件数は、平成21年度に前年比で22.8%も減少。大幅な景気後退で物件価格が下落し、売り控えが顕著になる一方、割安感から成約件数は伸びました。平成25年度はアベノミクス効果も手伝い、成約件数は20年間で最高の前年比13.3%増を記録しました。
ただ、平成26年度は消費増税による景況感の悪化から中古マンション市場も影響を受け、成約件数は前年比で9.5%減少しました。個人間で取引される中古物件価格に対する消費税は非課税ですが、あまり周知されていないこともあり課税対象である新築住宅と同様に前年の駆け込み需要の反動が出ました。
近畿圏でも成約件数は過去20年間、着実に増加してきました。近畿圏不動産流通機構※2が公表している近畿圏の中古マンション成約件数によると、平成26年度が16,288件で平成7年度の8,137件に比べて2倍になりました(図表2)。一方、平成26年度の新規登録件数は46,417件で、平成7年度(46,522件)に対してほぼ横ばいとなっています。
首都圏に比べると成約件数の振れ幅は小さく、阪神淡路大震災の影響が残った平成7~9年度を除くと、ほぼ増加基調で推移しています。ただ、新規登録件数はリーマンショック後の平成21年度に大きく減少しました。平成26年度も成約件数は前年比で2.4%減少し、新規登録件数も3.2%減少するなど消費増税に伴う影響が現れています。
これらの数字は流通機構(レインズ)※3に登録された件数に基づくもので、必ずしも市場全体を網羅したものではありませんが、中古住宅市場を示す唯一の公的データとして参考になります。中古住宅の売買にあたっては、まず市場の現状を把握することが大切です。売り時や買い時は景気や金利の動きに加えて、需給(取引件数や売り出し件数)の状況にも左右されます。ここで紹介した流通機構では月次や四半期の最新データも公表していますので、一度チェックしてみてはいかがでしょう。
→ 詳しくは「(公財)東日本不動産流通機構ホームページ」及び「(公社)近畿圏不動産流通機構ホームページ」を参照
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