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不動産基礎知識:借りるときに知っておきたいこと

8.賃貸借契約を結ぶ8-3 原状回復の取り決めについて

退去時の原状回復に関してはトラブルが多いため、
契約締結前に、原状回復にかかわる契約内容をしっかり確認するようにしましょう。

ポイント1 原状回復の基本的な考え方

国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(以下「ガイドライン」)では、原状回復を以下のように定義しています。
原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗、毀損(以下「損耗等」といいます)を復旧すること

なお、ガイドラインでは、建物の損耗等の復旧にかかる負担を分かりやすくするために、損耗等を以下の3種類に区分しています。

(1)建物・設備等の自然的な劣化・損耗等。時間が経つに連れて自然に劣化、損耗するもので、
  一般には経年変化といわれます。
(2)借りた人の通常の使用によって生ずる損耗等。通常損耗といわれます。
(3)借りた人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等。

善管注意義務:借主は借りている部屋を、相当の注意を払って使用、管理しなければならないということです。そのため、例えば結露のように、発生すること自体は仕方ない現象でも、それを放置して適切な手入れをしないがために、カビなどの被害を拡大させたという場合などは、善管注意義務に違反したとして、借主の責任とされる可能性があります。

ガイドラインでは(3)の損耗のみを借主が負担すべきとしています。例えば、次の入居者を確保する目的で行う設備の交換、化粧直しなどのリフォームについては、(1)(2)の経年変化及び通常使用による損耗等の修理ですから、貸主が負担すべきこととなります。
また、このほかに、震災等の不可抗力による損耗、上階の居住者など、借主とは無関係な第三者がもたらした損耗等については、借主が負担すべきではないとしています。

 国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」はこちら
リンクサイトへ

なお、地方自治体によっては、国土交通省のガイドラインをベースに、条例を制定するなどして自治体独自の「ガイドライン」を設けている場合があります。その自治体の賃貸住宅に適用されるルールになりますので、各自治体に確認するようにしましょう。

ポイント2 トラブル回避のための注意事項

トラブル回避のため、以下の点に注意をしましょう。

注意点1 入居時の物件確認の徹底

原状回復をめぐるトラブルの大きな原因として、入居時の物件確認が不十分であることが挙げられます。特に賃貸借の期間が長期に及ぶ場合には、時間の経過に伴って、入居時の状況や損耗の程度などがあいまいになるため、退去時の責任の所在等がはっきりしなくなることが考えられます。そのため、入居時に、室内の現況、損耗等などを記録に残して、借主、貸主双方で確認をしておくことがトラブル回避のためには有効でしょう。
 入居時に借主が確認すべき具体的な内容について、詳細は「9-1入居後1週間以内にやっておきたいこと」を参照

注意点2 契約内容の確認の徹底

契約時には、契約で定められた借主の原状回復義務の範囲が、ガイドラインに沿ったものであるかどうかを確認する必要があります。なお、国土交通省の賃貸住宅標準契約書では、通常の使用に伴う損耗等については、借主が原状回復義務を負わないことを明らかにしています。標準契約書に則った契約を締結するとトラブル回避のために有効です。

注意点3 特約に注意

国土交通省のガイドラインでは、契約書に特約を設けることまでは禁止していません。契約書に原状回復に関する特約がある場合には、借主に不利な内容になっていないかを確認した上で、具体的に借主が負担する範囲、おおよその金額などについて、納得いくまで説明を求めましょう。不動産会社によっては、将来の負担に関して修繕その他の単価などを明示していることもありますが、その金額が妥当であるかどうかについては確認が必要です。

 「10-2原状回復の具体例」を参照

なお、ガイドラインでは、借主に原状回復にかかわる特別の負担を課す特約の要件を以下のように定めています。これらの要件を満たさない場合には、特約が無効となる可能性もあるとしています。

(1)特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
(2)賃借人が特約によって、通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
(3)賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

コラム 借主負担DIYの賃貸借も可能に

通常の賃貸事業のように費用をかけて修繕や入居者募集を行うことは難しいけれど、現状のままであれば貸してもいいという空き家等の所有者のニーズと、自分の好みの模様替えを行って生活を営みたいという入居者のニーズが一致する事例もあることなどから、国土交通省では、柔軟な賃貸借契約によって個人住宅を活用するためのガイドラインの整備を行っています。
このガイドラインでは、貸主が現状のまま、または一部のみ修繕した状態で低額で賃貸し、借主が自費で修繕やDIYを行う「借主負担DIY」の指針を新たに策定しています。借主負担DIYの賃貸借契約の場合は、DIYを施した部分については退去時の原状回復義務を免除させる仕組みになっています。

 借主負担DIY賃貸借については、「国土交通省・最新の動きvol.67」を参照

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