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VOL.48「所有者不明土地」奥深い課題が残る「所有者不明土地問題」 執筆:住宅新報メディアグループ顧問・住宅評論家/本多信博

2019年02月20日

法務省「不動産登記簿における相続登記未了土地調査」(出典:国土交通省の資料より

法務省「不動産登記簿における相続登記未了土地調査」によると、最後の登記から50年以上経過している割合は、大都市では6.6%、大都市以外では26.6%(出典:国土交通省の資料より)

相続登記の義務化は可能か?

では、現在議論されているそれらの手立てについて、その実現可能性を探ってみよう。まず、所有者不明土地を生み出している最大要因である「相続未登記」の義務化だが、所有者(相続人)の立場からすれば、相続による所有権の移転登記をしなくても自分の所有権が失われるわけではない。また、登記を申請するためには相続人全員の同意が必要だが、既に何代にもわたって未登記状態が続いている農地(全体の約2割が未登記といわれている)や山林はざらにある。


そうした場合、明治時代にまでさかのぼって、その間の何百人もの相続人を調べ現在の相続人を特定しなければならないこともある。そのような労苦を義務付けることが果たして可能だろうか。都市部における普通の売買による所有権移転登記とはわけが違う。仮に法律で義務付け罰金を課したとしても、その過料が10万円や20万円程度だとすれば、相続人探索と登記費用のほうがそれをはるかに上回ることは間違いない。


求められる土地の相続放棄の受け皿づくり

次に、いらない土地の増加が今後も続出するとすれば、そうした土地の所有権を放棄できる制度の創設は不可欠と思われる。いらない土地について、わざわざ手間と費用をかけて登記する人はいないからである。そのような受け皿をつくらず、登記を義務化してもその強制力(実効性)は薄いだろう。過料を何百万円まで高めることができれば別であるが……。


そもそも、今後は登記を義務付ける対象である相続人が誰もいないケースも続出するだろう。なぜなら、生涯独身者が増えているからである。また、一人っ子同士が結婚した場合、子どもがいなければ相続人はいずれいなくなる。


このように考えれば、人口減少を背景に増大する「いらない土地」もしくは「行き場のない土地」の受け皿づくりは必須である。国や自治体が公共事業に使わないから引き取れないという言い訳はもはや通用しない。国土を管理・保全する最終責任は国にあるからである。


土地基本情報の基盤をどう整備するか

最終目標とされている「土地基本情報総合基盤」(仮称)構築の可能性はどうだろうか。任意となっている不動産登記制度だけでは土地の所有者を確定することはできない。最終登記者が真の所有者だとしても、そこに記載されている住所に現在も居住しているとは限らない。不動産登記制度に住所変更の通知義務はないからだ。これが所有者との連絡を取りにくくしている要因となっている。


そこで、登記情報と住民基本台帳、さらには固定資産課税台帳などとの情報連携が議論されている。では、登記簿に記載されている住所から住民基本台帳(住民票)をたどっていけば現住所にたどりつくことができるのだろうか。実はそうとは限らない。なぜなら個人が住所を登録している自治体から転出した場合、その転出情報(住民登録抹消と転出先情報)の保存義務期間は5年しかないからである。


一方、固定資産税課税台帳はどうだろうか。いうまでもなく、固定資産課税台帳は市町村が作成・管理している。スタートは、法務局からの登記記録更新情報である。法務省は所有権移転登記がなされると、それをその不動産が所在する自治体に伝える仕組みになっている。逆にいえば、所有権移転登記がなされていなければ、自治体の課税台帳が書き換えられることはない。


通常の売買による所有権移転登記がなされないことはあまり考えられないが、相続による所有権移転の未登記は先に見たように決して少なくない。その場合、自治体は土地所有者が死亡者となっていることを知りつつも、やむを得ず課税を続け(死亡者課税)、その課税明細書に「未相続」と表記して相続登記を促すことなどを行っている。


また、次のような問題もある。ある人が死亡した場合、その死亡届は住民登録をしている自治体に提出されるが、その人が他の自治体に土地を所有していたとしてもその死亡情報はその土地がある自治体には通知されないから、そのまま死亡者課税が続く可能性が高い。


このように見てくると、土地基本情報を整備するにしても、やはり大本である不動産登記制度のあり方を根本的に変革するしか問題解決の道はないことが分かる。特に相続未登記をどうすれば防ぐことができるかが最大の課題である。


奥深い所有者不明土地問題

所有者不明土地問題を引き起こしている最大の時代背景は、前にも述べた通り、人口減少による不要土地の増加である。では人口減少はなぜ起こるのか。産児制限など国の施策が影響を及ぼすこともあるが、先進国にあっては基本的には個々人の価値観によるものである。一般的に女性の社会進出が進むほど少子化や晩婚化、生涯独身化が進むといわれているが、「都市化」こそが、人間の本能を壊し始めたのではないかという仮説である。


というのも、あらゆる生物が種族保存本能をもっているのは、自然の前では極めて弱い存在だからだ。恐竜でさえ地球が氷河期を迎えると消滅した。ところが人間だけが「都市」をつくることで、自然からの防御に成功し、不要になった種族保存本能を弱めているのかもしれない。
だとすれば、都市化が進む世界のあらゆる先進国でいずれは日本のように人口減少が深刻化し、所有者不明土地問題を引き起こす懸念がある。所有者不明土地問題の解決策に先鞭をつけることは、少子高齢化対策に続き、わが国が世界の模範となり得る可能性を秘めているのではないだろうか。



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