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VOL.41「住宅セーフティネット」民間賃貸が〝準公営住宅〟に変身。改修費と家賃補助に関心集まる 執筆:住宅新報特別編集委員/本多信博

2017年12月20日

空き家を含む民間賃貸住宅を活用した〝準公営住宅制度〟とも呼ぶべき「新・住宅セーフティネット制度」が始まった。どういった制度なのか、これからどういった展開を見せるのか、主なポイントを整理しよう。

新たな住宅セーフティネット制度のイメージ(国土交通省の資料より転載)

新たな住宅セーフティネット制度のイメージ(国土交通省の資料より転載)

新しい住宅セーフティネット制度は「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」の一部改正法が10月25日に施行されたことによるもの。空き家対策とも連動しているため、空き家などを改修して住宅確保要配慮者専用賃貸住宅として登録する場合には、改修費用に戸当たり最大100万円が補助される。また、低額所得者(政令月収15万8000円以下)が入居する場合には家賃補助も実施される。全国賃貸住宅経営者協会連合会の三好修会長はこの新制度創設を「社会保障と住宅政策の融合」と高く評価している。住宅確保要配慮者の対象範囲(低額所得者、子育て世帯、高齢者、外国人など)が広いため、同制度が今後普及すると、一般の賃貸住宅から家賃補助が受けられる登録賃貸住宅への住み替えが増加する可能性も指摘されている。



1戸単位での登録が可能に
改修費補助は戸当たり最大100万円

新・住宅セーフティネット制度では、民間の賃貸住宅を「賃貸人が住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅」として都道府県などに登録することができるようになった。その際、登録は1棟単位ではなく1住戸単位でできるようになり、シェアハウスの場合であれば専用スペースの1室単位での登録が可能となる。
従って、登録に際しての改修費補助も普通のアパートは1住戸当たり最大100万円だが、空き家などをシェアハウスに用途変更する場合には1室当たり最大100万円が補助されることになる。例えば、5LDKの戸建て空き家を定員5人のシェアハウスに用途変更すると最大500万円の改修費補助が受けられる。


また、新・住宅セーフティネット制度では住宅確保要配慮者の入居を拒まない専用住宅として登録した民間賃貸住宅に、低額所得者が入居する場合には、家賃補助が実施されることも大きなポイントだ。しかも家賃補助が受けられる対象範囲は意外に広い。新婚や子育て世帯(18歳未満の子を養育していればOK)、高齢者、外国人世帯などが対象で、所得制限(年収)は給与所得者の場合、単身者で296万円、2人世帯なら351万円、3人世帯なら371万円、4人世帯なら447万円となる。さほど〝低額〟というイメージはない。
現に、総務省統計局が5年ごとに実施している「就業構造基本調査」の最新データ(2012年)によると、20代では年収200万円台以下の人が49%、これに300万円台(24%)と400万円台(14%)を加えると、年収400万円台以下の人が全体の87%を占める。30代でも400万円台以下が全体の54%に達している。
実際の家賃補助金の支給は6ヶ月程度の単位で、家主に直接支払われる仕組みだ。最大補助額は国と地方公共団体を合わせると毎月4万円となる。つまり、通常家賃が10万円の住戸を6万円で入居させていた実績を確認した上で、差額の4万円×6ヶ月分が一括して振り込まれることになる。ただし、最低10年間は住宅確保要配慮者専用賃貸住宅として管理運営されていくことが条件である。


公営住宅の応募倍率は全国平均で6倍
民間賃貸で不足を補うのが狙い

賃貸住宅の空き家が全国で430万戸もある一方で、家賃が安い公営住宅への応募倍率は全国平均で5.8倍となっている。特に東京都は22.8倍、首都圏平均でも15.5倍と高く、入居が難しくなっている。若年世帯の東京への集中が続いていることや、若年世帯の実質所得低下傾向、年金暮らしの高齢者世帯増加などが要因と思われる。
しかし、地方公共団体の財政状況や人口減少の更なる進展などを踏まえると公営住宅の建設が増えることは望みがたい。そこで、今後は民間の賃貸ストックを活用することで、これまで公営住宅が担ってきたセーフティネット機能を補っていこうという狙いが新・住宅セーフティネット制度の核心である。まさに、住宅政策は大きな転換期を迎えたことになる。社会保障と住宅政策の融合が始まったことは確かである。


セーフティネットの対象拡大に期待
弱者を支える世帯含めば地域包括ケアに貢献

ただ、新制度の内容が住宅・不動産業界、賃貸住宅オーナーなどに広く知られるようになり、賃貸市場に大きなインパクトを与えるようになるのはこれからだろう。国土交通省の伊藤明子住宅局長も「普及の状況を見ながら、今後改善すべき点があれば積極的に取り組む」と意欲的だ。全国賃貸住宅経営者協会連合会の来年度要望項目の中には、新・住宅セーフティネットの対象範囲を現行の高齢者、子育て世帯、低額所得者などからさらに拡大することが盛り込まれている。具体的には、いわゆる住宅弱者の生活を支援する人たちで、そのケアの仕事をするために一定の立地に居住する必要がある人たちも対象にすることを要望している。これが実現すれば、厚生労働省が進める地域包括ケアにも大いに貢献することになる。
高齢者や障害者、子育て世帯を支えるためには、地域が一つになることが必要である。そのためには住宅弱者が住宅を確保するだけでは足りず、そうした弱者を支えていく人たちにも手を差し伸べる必要があるからだ。



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