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VOL.35「空き家の管理サービス」自治体の支援を背景に、不動産業界で本格化か 執筆:住宅新報特別編集委員/本多信博

2016年12月21日

雑草が繁茂した空き家(左画像)、まだ使用できる空き家(右画像)

ひと口に「空き家」といっても、多様なバリエーションがある(出典:国土交通省住宅局住宅総合整備課「空き家の現状と問題について」より)

全国的展開を模索するNPO空家・空地管理センター
メディア戦略で市場開拓

NPO法人空家・空地管理センター(平成25年設立)は、増加し続ける空き家と空き地を一つの巨大な〝有効活用マーケット〟としてとらえる。全国で説明会を開きながら、現地事業者との連携を模索している。また、独自の「空家空地管理士」という資格も創設している。3日間の研修で、180ページのマニュアルをこなし、試験に受かると授与される。
巨大なマーケットにしていくためには、空き家と空き地の所有者が同センターの存在を知って、数多く相談に来てもらう必要がある。そこで、同センターはメディアへの露出も含めた積極的広報活動を展開している。既に全国の市町村80以上のエリアで地元不動産会社の協力を得ながら、空き家管理ビジネスを展開している。


ツール作成で全宅連も推奨
空き家管理のマニュアルを作成

全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)も、空き家管理を実践するためのマニュアルを作成している。これは、空き家を取り巻く状況、空き家管理ビジネスを実施する上での注意事項、空き家管理ビジネスモデル、運用管理指針などをまとめたもの。さらに「空き家管理ビジネスサポートツール」と題した資料も作成し、ビジネスモデルごとの具体的な作業マニュアル、空き家管理の業務委託契約書の参考案など各種書類も用意している。これらのツールを活用すればすぐにでも空き家管理ビジネスが始められる内容である。


このように、空き家管理をビジネスとしてとらえ直す動きが、業界で活発化している。特に地元密着型の中小不動産会社にとっては、地域再生・地方創生にもつながる社会貢献型ビジネスにもなることから、真剣に取り組むべき課題であるとの認識が広まりつつある。そうした中、国土交通省では全国の自治体が運営する「空き家バンク」の統合・一元化や、固定資産税部局による空き家オーナー情報を不動産業界に提供することができないか、といった検討が進められている。


こうした動きに対しては、一部に「大手業者が優位になるのでは」と懸念する声もあるが、全体としては期待する気運が強い。空き家バンクを設けている自治体の中でも、成約実績が飛び抜けて高いのが群馬県桐生市だが、その要因は、提携する中小不動産業界団体との密接な協調関係と、明確な役割分担にある。


空き家相談から管理受託、そして将来の売却や有効活用に至るまでには相当な期間と手間暇がかかる。それらを地道にこなしていくためには、地元自治体と地元不動産会社との連携が欠かせない。空き家管理ビジネスの将来性は、中小不動産業界と自治体との信頼関係、さらに地元住民からの信頼をどう確保していくかにかかっているようだ。



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