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VOL.35「空き家の管理サービス」自治体の支援を背景に、不動産業界で本格化か 執筆:住宅新報特別編集委員/本多信博

2016年12月21日

空き家の管理、解体、活用などを支援する自治体が増えている。例えば群馬県高崎市では、空き家の所有者が建物内部の清掃や敷地内の除草を市内業者に頼んだ場合、かかった費用の2分の1(上限20万円)を助成する。管理されていない老朽化した空き家が年々増えていくことは、自治体にとって深刻な問題だからだ。一方、不動産会社にとっては、こうした空き家管理ビジネスが見過ごせないテーマとなりつつある。そこで、今後の展開を考えていこう。

雑草が繁茂した空き家(左画像)、まだ使用できる空き家(右画像)

ひと口に「空き家」といっても、多様なバリエーションがある(出典:国土交通省住宅局住宅総合整備課「空き家の現状と問題について」より)


「空き家対策特別措置法」が後押し
国土交通省が予算を積み増す

自治体が空き家問題への取り組みを積極化している背景には、言うまでもなく、平成27年2月に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特別措置法)」がある。同法は、市町村が新たに策定した計画に基づいて空き家対策を推進する場合には、国と県がそれを総合的に支援することを定めている。これを踏まえ、国土交通省も来年度は平成28年度より多い80億円近い予算を空き家対策推進費として要望し、空き家の利活用をバックアップする。また、市町村が専門家などと連携して行う先駆的な取り組みも支援する(先駆的空き家対策モデル事業)。


不動産業界でいち早く、「空き家管理ビジネス」に参入して注目された福岡県のある不動産会社は、空き家ビジネス参入のメリットとデメリットを次のようにまとめている。


○メリット
(1)将来の優良顧客になる可能性がある(売買、相続相談などにつながる)。
(2)空き家管理ビジネスの取り組みが行政との対話の糸口になる。
(3)地域貢献性が高いので会社に対する信頼性が高まる。
○デメリット
(1)空き家管理の利益は薄い(先行投資になるので、ビジネスとしてはスケールメリットが必要)。
(2)実家の管理を委託することにデリケートになる顧客が多い(入ってもらいたくない部屋を指示されるケースなど)。


空き家を空き家のまま管理するというビジネスは、その期間が長ければ長いほど、神経を使う仕事だ。定期的に巡回していても、空き巣や不法投棄に使われるリスクはあるし、処分方法が決まらず売却も賃貸も解体もしないということは、家族が相続でもめている可能性がある。あるいは、高齢者施設に入居している親が、いずれ戻ることになっているケースもある。要するに、家族の思い出が詰まった家を守っていくという仕事は、極めて〝人間的なビジネス〟といえるだろう。
そして、気を使う仕事のわりには利益が薄いため、ビジネスモデルとして確立するまでには幾多の試行錯誤、スケールメリットの実現を待たなければならないと、多くの参入企業が証言している。


一人起業が可能
独立しやすいビジネス

一方で、一定の規模をもった会社(従業員数300名以上)などが管理ビジネスに参入する場合には、スケールメリットは不可欠だが、個人が一人で起業する場合は必ずしもそうではない。個人事業者が大切な家の管理を任せてもらうための信頼をどう得るかという問題を別にすれば、空き家管理に特化した個人会社として、管理戸数を地道に拡大させていく戦略もありそうだ。


空き家管理サービスの提供を始めた、北九州市のある不動産会社の社長はこう語る。「空き家管理ビジネスの魅力は、1人で始められること、初期費用がかからないこと、ネットで集客できて安定収入が得られることです」。また、成功のポイントとして、メニュー構成(基本サービスとオプションサービス、個別の通風サービス、通水サービスなど)をしっかりさせること、地方自治体とうまく連携することなどを挙げている。



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