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VOL.30「古民家再生」日本の伝統建築がもつ風格や味わいが魅力 執筆:住宅ジャーナリスト/山本久美子

2016年02月17日

築80年超の古民家を再生した事例(協力:YUUA建築設計事務所、撮影:筆者)

築80年超の古民家を再生した事例
(協力:YUUA建築設計事務所、撮影:筆者)

古民家を上手に再生するには
知識のある専門家に依頼することが大切

古民家がこれまで解体されてしまうことが多かったのには、理由がある。
昔の住まいは「夏を旨とすべし」という考え方で造られているので、夏の風通しが重視されている半面、冬の寒さをしのぐことが難しい構造になっている場合も多い。また、適材適所で異なる木材が使われているが、それぞれの老朽化の程度をしっかり確認する必要がある。


さらに、今の時代に合った快適な暮らしをするには、電気やインターネット回線といった生活インフラを向上させ、バス・トイレなどの水回りを最新設備に交換するといったことも必要だ。


一方、古民家で使われていた木材は良質で太いものが多く、年月を経るほど乾燥して強固になるので、基本構造として使える場合も多い。相原さんと山﨑さん夫妻は、筋交い(すじかい)や貫(ぬき)を補強して耐震性を高め、断熱材をしっかり入れるなどの補修はしたが、基礎や構造の基本的な部分はそのまま使っている。


また、古民家らしい欄間や壁板など使えるものはできるだけ再利用し、新しい木材も古材に調和するようなものを選んだ。ただし、木材が多用されている古民家では、木材の特性を理解した伝統的な建築構法を熟知した工務店や大工などを探して依頼する必要がある。建築家の夫妻なのでそのハードルは一般の人より高くはなかったが、どこに頼んでもスムーズにできるというわけではないようだ。


間取りについては、和菓子屋の店舗部分だったと思われる土間を打合せスペースにし、1階は仕事場と水回り、2階は居間と寝室に改修した。サッシ回りは複層ガラスにして省エネ性を高め、水回りなどもこだわって機能的で個性的なものを選んだ。


このように、古民家再生では大がかりな改修工事が必要となることがほとんどで、手間や費用がかかるという課題もある。


左)天井が高く広い土間を打合せスペースに改修。右)1階は土間に続く作業スペースとキッチン、バス、トイレなどの水回りを集中させた


左)天井が高く広い土間を打合せスペースに改修。
右)1階は土間に続く作業スペースとキッチン、バス、トイレなどの水回りを集中させた


この事例では現存する古民家を改修して再生したが、古民家を解体して別の場所に運搬して再生する「移築再生」や、古民家の部屋などの一部を新築と組み合わせて再生する「部分再生」、構造材の一部として再生する「古材再生」などの方法もある。



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