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VOL.27「地方移住」注目される地方移住の可能性と課題について 執筆:住宅新報特別編集委員/本多信博

2015年08月19日

地方は農作業を手伝ってくれる移住者を求めている(北海道旭川市内)

地方は農作業を手伝ってくれる移住者を求めている(北海道旭川市内)

地方創生論議が本格化する中、具体的テーマになっているのが「地方移住」である。地方創生は簡単に言えば地方に住む人の数を増やすことだから、地方自治体にとっては外部からの移住者を増やすことが大きな目標となっている。そのためにはどういう世代に、どのような動機で来てもらうのか、明確なビジョンと戦略が求められている。


地方移住の主役は
アクティブシニア

鍵握る日本版CCRC構想

地方移住の第一の対象者と見られているのが、団塊世代(1947~49年生まれで現在約700万人)を中心とするアクティブシニア層である。政府が6月末に閣議決定した「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」でも、元気な高齢者をターゲットにした「日本版CCRC構想」が盛り込まれた。
これは東京圏などに居住する高齢者が自らの希望に応じて地方に移り住み、地方大学などでの生涯学習や地域社会との協働、多世代との交流などを通じて健康でアクティブな生活を送るとともに、医療介護が必要な時には継続的なケアを受けることができる共同体構想である。


この日本版CCRC構想について、まち・ひと・しごと創生本部統括官の山崎史郎氏はこう述べている。「従来の発想とは大きく異なるものだ。施設をつくったから高齢者の方、どうぞ来てくださいというものではない。ケアを受けることが主ではなく、自分がそこで何をしたいか、地域のためにどんな貢献ができるのか、義務感をもって参加する必要がある。そうした意欲がない人にはそもそも来てほしくない。」
つまり、高齢者を弱者と捉える従来の発想ではなく、社会に積極的に参加してもらうためのプラットホームをどうつくるかという問題意識がそこにある。高齢者の地方移住を促すには立派な施設をつくることよりも、高齢者の『やる気』を引き出すソフトづくりが大切だということである。


ワープステイ構想にも注目集まる

同様の発想で、アクティブシニアの地方移住を推進する「ワープステイ構想」もある。これは5年間の定期借家権を使って自宅を子育て世帯などに賃貸し、地方に移住するが、5年後にまた都会に戻ることを前提にしている。本格移住と違って家族の理解が得やすいことや、自宅を貸し出す賃料と地方で家を借りる賃料との差額が新たな収入源になるなどのメリットがある。
さらに受け入れ側の地方にとっても、定住ではないので6年目には都会に戻っていくことになるが、毎年元気な高齢者が交代でやってくるので常に元気なコミュニティーを維持できるというメリットがある。


都会に戻ってしまうことに対しては、「5年程度では大した地域貢献はできないのでは」といった声があるが、休耕田の活用や地域のイベント復活などの手伝いにそれほど難しい技術は必要ない。野菜づくりにしても身近にプロがいるわけだから、1~2年でかなりのレベルに達するはずだ。一定期間だけでも微力とはいえ地方の活性化や国土保全に貢献することは十分可能である。そして、都会に戻ってからも5年間の『田舎留学』で得た貴重な体験や知識を生かし、リセットした心で残りの人生を健やかに生きていくことができるというわけである。




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