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コラム Column


鉄道会社の空き家活用サービス 株式会社 Geo Laboratory 代表取締役 上村要司

(2017.10.18)

 近年、都市部でも郊外を中心に人口の減少がみられるようになり、将来的な空き家の急増が懸念されています。大都市圏に路線網を持つ鉄道会社は、沿線の住宅地を開発することで発展してきましたが、少子高齢化の時代を迎えて新たなビジネスモデルへの転換を迫られています。 鉄道会社を取り巻くキーワードとして今、注目されているのが沿線価値の向上です。都心のターミナルや駅なか商業施設、保育施設等の整備に加えて、沿線の住み替えや空き家の解消を促すサービスが展開され始めています。

基本的な空き家管理サービス

 2014年の空家等対策の推進に関する特別措置法の成立以降、鉄道会社でも空き家管理サービスに乗り出す動きがみられます。首都圏の京王電鉄や相鉄ホールディングス、近畿圏の近鉄不動産、阪急不動産などでは、一般の不動産会社や警備会社等と同様に、月1~2回程度の巡回管理や報告書作成を行うサービスを行っています。

 各社ともサービス内容に大差はなく、月額数千円で一戸建てやマンション、空き地などを対象に、敷地の見回りや郵便物の整理、庭木やごみの不法投棄の確認、建物内の通気・通水、清掃等を行っています。地震や台風の際に巡回するサービスもあり、空き家所有者にとって安心できる内容と言えるでしょう。こうした取り組みは、物件の資産価値の棄損を防ぐだけでなく、鉄道会社にとっても沿線イメージの向上に寄与するものとして注目されます。

新たな空き家の借り上げ転貸サービスも

電車と街のイメージ

 最近では、積極的に沿線の空き家解消を図るサービスも登場しています。首都圏の小田急電鉄は系列の不動産会社のほか、外部の空き家リノベーションを手掛ける企業と提携し、空き家の借り上げ転貸サービスを始めています。同社が空き家オーナーから物件を借上げてリノベーションを行い、入居者に5年間転貸(サブリース)します。オーナーは小田急電鉄から当初5年分の前払い賃料を一括で受け取ることでリノベーション費用に充当できるため、実質的な工事費は不要となる仕組みです。

 相鉄ホールディングスや京急電鉄も同様のサービスを展開しています。相鉄ホールディングスでは、3年分の前払い賃料をリノベーション費用に充当できるほか、借り受け期間と貸し出し期間を同じ定期借家契約(原則7年)にすることで、転貸契約終了後にオーナーへの返却が円滑に行われる点が特徴です。京急電鉄は、空き家の改修・サブリースを展開する企業と提携し、戸建てやマンション、アパートだけでなく長屋やビル、店舗、倉庫も対象に、転貸事業を行っています。

 近畿圏では、阪急不動産が系列会社以外のリノベーション会社や駐車場シェアと民泊の仲介会社と提携し、空き家をトータルでサポートする窓口を設置しています。空き家の管理サービスや売却・賃貸管理、リフォーム相談のほか、民泊による利活用や空き家の駐車場シェアリングサービスなど、多彩なメニューをそろえています。特に、空き家を活用した駐車場や民泊のシェアサービスは注目され、今後他社に広がる可能性が考えられます。

 いずれも各鉄道会社の沿線が対象となりますが、小田急電鉄は同社の沿線とJR山手線沿線の駅徒歩15分以内の新耐震物件を対象とし、近鉄不動産は奈良市の一部地域のみを対象としています。基本的に、戸建を中心とした賃貸市場が成立するエリアが中心であり、新たな入居者の転入によって良好な住環境や沿線ブランドの維持・向上を図る意図があります。

 空き家の借り上げ転貸サービスは一定の収益性の確保が前提となるため、利用の可否はケースバイケースとみられます。契約更新時に家賃保証額が減額されることも考えられるため、利用にあたっては十分な検討が必要です。ただ、こうした各社の取り組みは沿線の活性化や資産価値の維持・向上につながるため、新たなビジネスの広がりが期待されます。今回紹介した事例以外にも、空き家解消に向けたサービスはみられます。沿線に空き家を抱えている場合、鉄道会社の取り組みについて一度調べてみてはいかがでしょう。

主な鉄道会社等による空き家関連サービスの例

2017年10月現在

サービス名称
「相鉄の空き家バンク&リース」
相鉄ホールディングス(株)
2016年3月開始
概要

●関係会社:相鉄ホールディングス・相鉄不動産販売・相鉄リフォーム

●事業内容:空き家オーナーが建物をリフォームした上で相鉄不動産販売が借り受け、戸建賃貸としてサブリース。リフォーム費用は、相鉄不動産販売からの3年分の前払い賃料で充当でき、実質的な負担なし。借り受け期間と貸し出し期間を同じ定期借家契約(原則7年)とすることで、契約終了後は速やかにオーナーに返却され、その後転用も容易に。

対象エリア・物件等

・相鉄線沿線

・戸建て

・空き家を定期的に巡回、管理する空き家・空き地あんしんサービスも展開

サービス名称
「小田急の『安心』サブリース」
小田急電鉄(株)
2016年10月開始
概要

●関係会社:小田急電鉄・小田急不動産、ハプティック・グッドルーム

●事業内容:小田急電鉄が空き家オーナーから物件を借上げ、無垢フローリングのデザインによるリノベーションを行い、入居者に5年間転貸(サブリース)する。空き家オーナーは小田急電鉄から当初5年分の前払い賃料を一括で受け取り、リノベーション費用に充当。6年目以降は、満額賃料を受け取ることができる(但し2年更新)。

対象エリア・物件等

・小田急沿線及びJR山手線沿線

(駅徒歩15分程度以内)

・戸建て、マンション、アパート

(新耐震物件)

・1戸(1部屋)から対象

サービス名称
「カリアゲ京急沿線」
京浜急行電鉄(株)
2017年4月開始
概要

●関係会社:京急電鉄・京急不動産・京急リブコ、ルーヴィス

●事業内容:京急電鉄が空き家オーナーから物件を借上げ、京急電鉄の費用負担でリノベーションを行い、入居者に6年間転貸(サブリース/査定賃料の10%を家賃保証)する。東京都区部を中心に空き家の改修・サブリースを展開するルーヴィスと京急リブコが空き家のリノベーションを行い、京急不動産がオーナー募集と賃貸管理を実施。

対象エリア・物件等

・京急線沿線

・戸建て、マンション、アパート、長屋、ビル、店舗、倉庫

・1戸(1部屋)から対象

サービス名称
「阪急の空家サポート」
阪急不動産(株)
2016年9月開始
概要

●関係会社:阪急不動産、阪急電鉄、百戦錬磨、阪神園芸、ALSOK、ハプティック、アキッパ

●事業内容:空き家専門の相談窓口を設置し、ワンストップでサポート。空家管理サービスや売却・賃貸管理の相談、リフォーム・リノベーションの相談、民泊による利活用の相談、その他(植木の剪定・伐採、駐車場への転用)サービス、駐車場のシェアリングサービス(空家の駐車場活用)、賃貸リノベーション(空家の改修後賃貸化)を展開。

対象エリア・物件等

・阪急・阪神(京阪神)沿線

・戸建てを中心とした旧開発分譲地が主力

サービス名称
「近鉄の空家・空地サポート」
近鉄不動産(株)
2017年6月開始
概要

●事業内容:空家サポートの基本コースは、建物への侵入痕跡の有無、窓ガラスの割れ・破損の有無、玄関・勝手口の鍵の施錠確認、窓・雨戸の施錠確認、駐車場シャッターの施錠確認など。 プレミアムコースは基本コースに加え、建物の簡易インスペクションによる雨漏りや床下の不具合の検査、通水・通風、庭の草抜きサービスなど。 空地サポートは、雑草の状況確認、敷地周囲の側溝の確認、ゴミの不法投棄の有無などを実施。

対象エリア・物件等

・奈良市学園北・百楽園・西登美ヶ丘

・戸建て・空き地

資料:各社ホームページ等より作成

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